気味の悪い話は、オフィスばかりではない。先日、いとこが子供を連れて彼女の実家(わたしの叔母の家)に1週間ほど帰省していた。わたしの家から電車で30分ほどの距離なので、わたしも遊びに行くことに。
こんにちはーとあいさつし、“勝手知ったる他人の家”とばかり「どうぞ」と言われる前に上がり込む。いつもなら、このへんで叔母が現れ、何かと世話を焼いてくれるはず……なのだが、今日はその気配がない。あれ、留守かな。リビングに足を踏み入れるわたし。すると、そこには叔母といとこと、彼女が連れてきた4歳になるミニ怪獣……ではなく、元気な甥っ子がいた。
ただ、何やら叔母の様子がおかしい。叔母が席を立ったとき、いとこに聞いてみた。
わたし ねぇ、叔母さん、元気がないみたいだけど。
いとこ うーん。気にすること無いとは言ったんだけどねえ。実はテレビが……。
叔母の悩みはテレビ? 叔母の家のテレビはかなりの年代物である。画面の長さの比が4:3の、ブラウン管のテレビだ。そのテレビが、どうかしたの?
いとこ テレビの画面に、だれかの横顔らしき不気味な人影が映り込むようになってね……。何かタタリでもあるんじゃないかって、不安がっているのよ。でもわたしはただの故障だと思う。このテレビ古いし。
わたし ぃぇ〜。
「ひえー」と言ったつもり。声になってない。「ただの故障」と言う、いとこのセリフは、まるで自分自身に言い聞かせているようだった。第一、声が笑っていない。
思わず視線をテレビに向けるわたし。ブラウン管は消えたままだ。そして黙り込むいとこ。部屋に戻った叔母も、いつもの元気はどこへやら。そういえば、今の時間帯は叔母が大好きな韓流ドラマの再放送があるんだけど、彼女はテレビを付けようとしない。そんなに怖いのか?
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