中小企業のIT化をマーケットとして考えてみるIT Oasis(2/2 ページ)

» 2008年09月02日 14時31分 公開
[齋藤順一,ITmedia]
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中小企業向け開発の難易度

 中小企業向けのシステム開発は情報伝達が人間系中心で、業務にも逆プロセスが多く発生し簡単なものはない。

 そのほかにも利用者のITリテラシーの問題がある。

 大企業であれば情報システムに接する社員であれば利用者、管理者を問わず、おおむね大学教育を受けたレベルの人たちが携わっているという前提でシステムを提供できる。

 一方、中小企業はユーザーレベルは一様でない。従業員のうち半数程度が外国人という会社も珍しくない。専門学校で簿記を学んだ社員が最もITに精通しているとして、情シスを担当している例がある。また従業員数が少ないためベンダー対応の専任者を捻出することも難しい。1000人の会社で1人をプロジェクト担当として専任するのは容易であるが、100人の会社では兼務でも困難なのである。

 大企業向けのシステムを中小企業に適用するのも難しい点がある。

 例えば、生産管理システムの中にはMRPを目玉にし、欠品がありそうだと材料発注までしてくれる商品がある。大企業のように定常的にモノ作りが行われる業務プロセスでは便利な機能である。

 しかし、中小企業ではうまくいかないケースが多い。こうしたシステムは少品種大量生産向けを対象にしている場合が多いからである。中小企業では昨今、少品種大量生産は海外に移転し、多品種少量、さらには多品種変量生産に移行しており、将来予測を踏まえた生産計画なしに材料発注などしてもらっては困るのである。

 生産計画はコンピュータにとってさらに難題である。大手ならいったん生産計画を立てれば、変更があってもカンバンを投げれば下請けが頑張ってジャストインタイムで納入してくれる。中小企業にはシワをよせる相手がいない。生産計画にあたっては残業、委託生産、シフト勤務による対応、パート活用などいろいろな選択肢を考慮して山積みをする必要があり、なおかつ流れている製品の納期や重要度も考慮する必要がある。場合によっては得意先に納期遅延を謝ることを前提として生産計画を立てるといった荒業も存在する。コンピュータでは手に負えないのである。しかし、業務の効率化を進めていくにはITを活用するしかない。

 現状では、真に中小企業向けのシステム提案というのはベンダーからなかなか提案されてこない。最初から中小企業の業務プロセスを考えて作られたシステムは意外と少ない。そこが中小企業のIT化に際して出てくる悩みの源泉となっている。

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プロフィール

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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