モバイルから安全に企業ネットへ接続しよう

3.5GやWiFiが普及、モバイルアクセスの手段を見直そうセキュアモバイルアクセス(2/2 ページ)

» 2008年09月05日 09時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]
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通信速度で有利な公衆無線LAN

 一方、最も通信速度で有利なのが公衆無線LANサービスだ。IEEE 802.11b/gなどの規格に対応したアクセスポイント(Wi-Fiスポット)を使って接続する。通信速度は理論値で11Mbps(11b)もしくは54Mbps(11g)と高速だ。

 通信環境も安定性は高く、大容量のデータ通信にも対応しているため、「ノートPCを使ってさまざまな仕事をこなしたい」というニーズに合致する。比較的サイズの大きなデータの転送も苦にならず、Wi-Fiスポットを「もう1つのオフィス」として活用して、本格的に仕事を進めることもできるだろう。

 全国にWi-Fiスポットを展開する主要なサービスには、NTTコミュニケーションズの「HOTSPOT」、NTTドコモの「Mzone」、ソフトバンクBBが提供する「BBモバイルポイント」の3種類がある。いずれも北海道から沖縄までの全国をカバーしており、HOTSPOTは約4000カ所、Mzoneは約5000カ所、BBモバイルポイントは約3500カ所のWi-Fiスポットを保有している。

主要な公衆無線LANサービス。各サービスとも比較的安価であり、1日限定利用のサービスも設定されている。HOTSPOTとMzoneはBBモバイルポイントとのローミング(随時利用料金が発生)もできる
サービス名 HOTSPOT Mzone BBモバイルポイント
初期費用 1575円(定額契約の場合のみ) なし なし
利用料金(月額) 1680円 1575円(FOMA契約者は840円) プロバイダにより異なる(Yahoo! Japanの場合は525円)
一時利用料金 500円/日 525円/日 500円/日または1000円/2週間(ファミリーマート店頭端末でのみ販売)
アクセスポイント数 約4000カ所 約5000カ所 約3500カ所
通信方式 IEEE 802.11a/b/g IEEE 802.11a/b/g IEEE 802.11b
最大速度(下り) 54Mbps 54Mbps 11Mbps
プロトコル制限 なし なし(一部VPN利用ができないスポットあり) なし(VPN利用不可)
主なスポット カフェ・ファストフード店舗。JRや私鉄、地下鉄の主要駅。空港、ホテル、レストランなど。 カフェ・ファストフード店舗。JRや私鉄、地下鉄の主要駅。つくばエクスプレス線の車内、空港、ホテル、レストランなど。 全国のマクドナルドおよび主要喫茶店チェーンの店舗、主要な駅、ホテル、空港など。
ローミング先 BBモバイルポイント(定額:819円/月、スポット利用:315円/日)、海外 BBモバイルポイント(スポット利用:315円/日)、エアポートネット(成田空港:利用料金は無料) なし

 料金も比較的安価であり、HOTSPOTは月額1680円、Mzoneは1575円、BBモバイルポイントは525円(Yahoo! Japanで契約した場合)となっており、手軽に導入できるだろう。Wi-Fiスポットは都市部を中心に拡大を続けており、利用できる場所が増えている。また、公衆無線LANは利用可能なプロトコルの種類を規制しているケースが少ないので、ファイル共有なども問題なく行えることが多い。

 ただし、Wi-Fiスポットのサービスは地図上では「点」であり、鉄道の駅など局所的な利用にとどまる。「いつでもどこでも」という感覚で使えないのが、公衆無線LANサービスのウィークポイントだ。携帯電話でWi-Fiスポットの情報が提供されているが、ノートPCを持ち歩きながら探すことは面倒だろう。出張であれば、公衆無線LANの事業者のサイトから目的地の地図情報を印刷して持ち歩くこともできるだろう。だが、初めて訪れる土地でWi-Fiスポットを見つけるのも難しい。駅などから離れるとほとんど利用できないケースも多い。

HOTSPOTのエリア検索で名古屋駅周辺のWi-Fiスポットを10件表示した。HOTSPOTとMzoneは主要駅を中心にエリア展開が行われており、それ以外のエリアではほとんどスポットが存在しない。BBモバイルポイントは、マクドナルド店舗を中心に展開しており、利用可能な場所はほかのサービスよりも拡散している

 また、BBモバイルポイントのようにプライベートのIPアドレスをユーザーに提供するようなサービスでは、IPアドレスの問題によってVPN接続ができないという問題も発生する。これについては次回に詳しく解説しよう。

用途や目的に応じて接続手段を選ぼう

 このように、公衆無線LANサービスと携帯電話系サービスはそれぞれメリット/デメリットがあり、現在のところすべてのニーズを適えるような決定的なサービスはまだ登場していない。だが、このような状況もあと4〜5年ほどで大幅に変わろうとしている。

 携帯電話系のモバイルアクセスの世界は、3.9Gそして4Gに向けて進んでいる。現状では3.5GのHSDPAが携帯電話系では最速のデータ通信手段となるが、今後は100〜200Mbps超の高速通信が実現する見通しだ。さらに、モバイルWiMAX(IEEE802.16e)やLTE(Long Term Evolution)も有力視されており、2010〜2012年頃にサービスを開始する予定となっている。PHSの世界も変わろうとしている。ウィルコムは、2009年春から100Mbps以上(当初は数十Mbps)もの高速通信を可能とする次世代PHSサービス「WILLCOM CORE」をスタートさせる。本格的な展開は2009年末〜2010年頃になると見られており、携帯電話系およびPHS系サービスの高速化が一気に進みそうだ。

それぞれのサービスの比較
種類 公衆無線LAN HSDPAサービス PHSデータ通信
通信速度 ◎(最大54Mbps) ○(最大7.2Mbps) △(最大512Kbps)
メリット ◎通信速度を気にせず、大容量データを伴う業務もカバー ○都市部なら問題なく利用できる 人口カバー率99%で場所を選ばない
デメリット Wi-Fiスポットを探すのが手間 通信速度が利用環境に左右される。上りの通信が低速で、大容量データの送信が苦手 通信速度が利用環境に左右される。電子メール閲覧などの用途に向く
月額コスト ◎月額525〜1680円 ×月額1000円から。頻繁に利用するとすぐに定額の上限(5480円または6480円)になってしまう。 ○「新つなぎ放題」では通話も含めて定額

 それまでは、それぞれのサービスの特性を理解した上で、ノートPCの持つパフォーマンスの活用を優先するならWi-Fiスポット、電子メールやWebブラウズが主体で機動性を重視するなら携帯電話系サービスといったように、用途や目的に応じて最適な接続手段を選ぶことがモバイルアクセスのポイントとなるだろう。次回は、それぞれのモバイルアクセスの手段におけるVPN接続やセキュリティ対策の違いにフォーカスし、安全にモバイルアクセスを行うための具体的な方策を解説していく。

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