サーバ仮想化の目的については、現状、「ソフトウェアの開発・テスト」、「サーバ統合」などが挙げられている。しかし仮想化技術の進化によって、導入メリットは大幅に広がり導入目的も大きく変化するのではないかと考えられている。自社のIT基盤上にそのまま導入した場合のデメリットなども考慮して、前向きな導入検討の時代に入ってきたようだ。
前編では、サーバ仮想化技術の導入実態について、IDCジャパンのユーザー調査結果をもとに紹介した。後編では仮想化技術が企業のITにどのような影響や変化をもたらすのかについて考えてみたい。
IDCジャパンでは、今後の中長期における仮想化ソリューションのロードマップを予測している。この予測によると、現在の仮想化技術は「仮想化1.0」の段階であるという。仮想化を利用する目的も、2006年の時点では「ソフトウェアの開発・テスト」が36%、「サーバ統合」が49%、「アベイラビリティ」が11%となっている。つまり、それらが現段階で企業が仮想化に期待している要件といえる。
だが、同社のソフトウェアリサーチアナリストである入谷光浩氏は、「これが仮想化の本当の目的ではない。あくまでもスタートとしての利用形態」と見ている。入谷氏は、7月29日に開催された「NEC×VMware仮想化ソリューションフェア」の講演で、今後仮想化を利用したソリューションはさまざまな形で進化すると予測した。
それが「仮想化2.0」や「仮想化2.5」という形態への進化だという。近い将来、仮想化によってパッチやメンテナンスの作業が、サーバを稼働させたままの状態で可能になる。つまり、計画的ダウンタイムの短縮が可能になるということだ。さらに、予期せぬ障害についても、クラスタリング化やディザスタリカバリ、バックアップなどが仮想化の延長上で安価に実現し、計画外のダウンタイムも削減していくという。つまりメリットがどんどん拡大していくというわけだ。
さらに進化が進むと、「仮想化3.0」が実現する世界となる。仮想化が標準になり、動的なプロビジョニングやリソースプールが作れるため、運用の自動化が進展する。また、SOAの基盤としても仮想化技術が有効に支援するという。とりわけ、ユーティリティコンピューティングやクラウドコンピューティングといったオンデマンドのIT基盤を支える技術としても仮想化が不可欠となるという。
少なくとも2011年には、2006年時に利用したいとしていた開発・テストや統合が縮小し、「可用性確保」「ユーティリティコンピューティング」「仮想クライアント」といった目的によってサーバの仮想化が進むと見ている。したがってこうした進化の過程を念頭に入れて、仮想化ソリューションの市場動向を見ていく必要が出てくるともいえる。
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