システム障害から会社を救うのは誰?――名ばかりCIOはいらないサバイバル方程式(1/2 ページ)

企業にとってのCIOの重要性を考えるとき、システム障害によるさまざまなトラブルが起こったことを想像すればいい。システム障害によるトラブルを未然に防ぐ、あるいは事故後、速やかに対応するには権限を有した専任のCIOの存在が必要になる。

» 2008年09月04日 17時19分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

システム障害から分かる専任CIOの重要性

 前回まで、専任CIO設置企業が明らかに経営に優れていること、しかしCIOの重要性が叫ばれる割にはCIOが企業の中で軽視されていることをみてきた。今回は、企業の中でのCIOの重要性・必要性をさらに多面から分析し、再認識する。

 CIOは、なぜ重要で必要なのか。

 ERP導入をはじめとして、これほど企業がIT化されると、ITに関するトラブルが企業の存続を左右しかねない。ここ何年もの間、枚挙にいとまがないほどのシステム障害がマスコミを賑わしている。

 例えば、20年ほど前某生命保険会社が基幹系システムの全面再構築を計画し、システムが完成したが応答速度が使用に耐えられずやり直し、立ち上げが当初計画より3年遅れた。

 15年ほど前、某航空会社は国内線空港システムの開発に取り組んだ。しかし、テスト段階で業務処理手順が実情に合わず、仕様を最初から検討し直し、立ち上げが1年以上も遅れた。立ち上げ遅れは、経費が予算以上にかかることや機会損失から、多大な損害となる。

 2002年みずほ銀行でシステム統合に失敗し、開業早々発生したATM障害や二重引き落としのトラブル、2005年11月1日の夕刊から株価が消えた東京証券取引所の取引全面停止トラブルは有名である。2007年神戸新聞で、新聞製作システムで障害が発生。この年ANAでもシステム障害で多くの便が欠航するトラブルが発生している。

 システム障害による大規模なトラブルは今年に入ってからも頻発している。代表的なトラブルでは2月の信金中央金庫、5月の三菱東京UFJ銀行などだ。また同じ5月、ロイター通信の配信がシステムの不調により停止し、復旧まで6時間かかった。

 これらのように、業種を問わないトラブルが頻発している。しかも、その内容から推測できると思うが、企業にとって致命的ともいえるトラブルである。CEOCOOといった役員がただお詫びして済むという問題ではない。

 こういうトラブルを未然に防ぐことは、一介の情報システム部門長や専門外の役員の手に負えないだろう。システムの開発および構築、管理、運用、評価まで、企業全体の経営判断とITとの整合性についてコミットする、CIOの存在が求められるゆえんである。加えて、いったんトラブルが発生した時に被害を最小限に食い止めるために、CIOの活躍が期待される。すなわち、トラブルを速やかに解決するには人材や資金を要するので、CIOがその権限を行使しなければならない。その権限を有するからこそCIOが必要なのであり、もしその権限を与えられていないとすれば、それは名ばかりCIOでしかない。

 次に、経営環境がCIOの必要性を強めている。グローバル化、国内外の市場の変化、原材料の高騰、人材高齢化、CSR(企業の社会的責任)などにより、高度で瞬時の経営判断を要求される。そこにITは不可欠であり、質の高いITを駆使するために、高い知見や能力、意識を持ったCIOが欠かせない。しかも、こうなると「兼任CIO」では勤まらない。日本で一般的に認められている、「約3分の2以上CIO業務にかかわっていれば専任」という意味でも勤まらない。完全な専任者が求められる。

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