システム障害から会社を救うのは誰?――名ばかりCIOはいらないサバイバル方程式(2/2 ページ)

» 2008年09月04日 17時19分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]
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J-SOX対応にもかかわるCIOの権限と能力

 さらにCIOの重要性は、J-SOX法によって決定的になったとも言えよう。

 J-SOX法(金融商品取引法)が求める内部統制のガイドラインとして、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」が2007年2月に正式確定した。その中で、内部統制の6つの基本的要素の1つに「ITへの対応」があり、「組織目標を達成するために予め適切な方針及び手続きを定め、それを踏まえて、業務の実施において組織内外のITに対し適切に対応すること」と定義する。そして「ITへの対応」は、「IT環境への対応」と「ITの利用及び統制」からなる。その中の「ITの統制の構築」の項に、「経営者は、自ら設定したITの統制目標を達成するために、ITの統制を構築する。ITに対する統制活動は、全般統制と業務処理統制の2つからなり、完全かつ正確な情報の処理を確保するためには、両者が一体となって機能することが重要となる」と明記してある。

 具体例として、「全般統制」にはITの開発・保守、システムの運用・管理、システムの安全性などが、「業務処理統制」には入力情報、例外処理などの管理が挙げられている。

 このようなJ-SOX法を忠実に実行するには、CIOの設置が、しかも有能にしてCEOから信任と権限を得た、意識の高い専任CIOの設置が必須となる。

 以上3つの視点からCIOの重要性と必要性を検討してきたが、実態調査の結果でダメ押しをしよう。前々回でも触れたが、経済産業省調査の「情報処理実態調査」(2006年3月31日調査)がCIOの重要性を雄弁に語っている。CIO設置状況と経営意思決定迅速化の関係である。CIOが設置されている企業と設置されていない企業、それぞれにおける経営意思決定迅速化実現の割合であるが、部門間レベルで85.6%と67.6%、全社レベルで78.8%と57.2%、企業間レベルで37.2%と20.8%と、CIO設置企業の方が「意思決定迅速化が充分に実現できている」と回答した割合が高い。この統計結果には、経営意思決定を迅速化するために、CIOの設置、しかも専任CIOの設置が有効であることが表われている。

 トップ及び経営陣は、CIOの重要性と必要性を充分認識し、建前で体裁を繕うのではなく、本音で真の体制を作らなければならない。

 では、それほど重要なCIOのコアコンピタンスとは何か、それを身につける人材育成のあり方、そして何よりも企業の中で軽視されているCIOはどうあるべきかを、次回以降で検討していく。

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プロフィール

ますおか・なおじろう 日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを歴任。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。現在は「nao IT研究所」代表として、執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)


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