HPの先端技術が生まれる場――HP日本研究所の活動(1/2 ページ)

米HPは世界7カ所に研究拠点を持つ。日本のHP研究所では、モバイルやソーシャルネットワーキングにおける次世代オンラインコミュニケーションについて研究を進めている。

» 2008年09月13日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米HPは今年3月、先端技術研究部門の「HP Labs」の運営を見直し、より多くの研究成果を各種事業や製品に反映させていくことを目的とした体制作りに着手した。再編に当たって、同社では「情報爆発」と「クラウドサービス」「データと情報の交換」「持続可能性」「高機能インフラストラクチャ」の5つ研究理念を制定。世界7カ所にある同社研究所では、これらの理念に基づく23の研究プロジェクトが進められている。

 都内にある日本HPのHP日本研究所では、5つの理念のうち「クラウドサービス」と「データと情報の交換」に関するテーマの研究を行っている。

HP日本研究所の活動

 クラウドサービスとは、インターネットを通じてユーザーの嗜好や予定、場所、状況に合わせたサービスをオンデマンドで提供することを目指すものであるという。また、データと情報の交換は情報のデジタル化による活用や流通促進を目指すもので、コンテンツのデジタル化技術やデジタルコンテンツの活用、印刷やメディア化などのコンテンツの表現技術について研究する。

 同研究所では「Community and Interactive Media Lab」というコンセプトを打ち出し、インターネット上のさまざまなユーザーやコミュニティーが相互に活発な意思疎通を図っていくことができるための技術やサービスの仕組みについて研究を進めている。具体的には「Community Navigator」という、ユーザーがリアルタイムに必要な情報へアクセスしたり、ほかのユーザーとチャットや画像を利用した視覚的な会話を楽しめたりするといった仕組みの実現を目標にする。

小田氏

 小田弘美所長によると、Community Navigatorを通じて実現するユーザー同士の交流環境を「ダイナミックコミュニティー」と呼ぶ。具体的には、交流を求めているユーザーが、オンラインサービス上にいる別のユーザーを特定の目的に沿って発見することで、ユーザー同士がすぐに交流できるようになるとしている。

 ダイナミックコミュニティーの実現に向けた主な研究領域は、オンラインコミュニティーでのユーザー行動分析や情報伝播の仕組み、プライバシーのあり方、インタラクティブメディアの可能性、デバイス環境、ユーザーインタフェースなど。「一緒に何かをするためには、必要な知識を持ち合わせたユーザー同士を適切なタイミングで結びつけていくことがポイントになる」(同氏)

ダイナミックコミュニティー実現に向けた研究領域

ユーザーを結びつける知恵

 すでに基礎研究の成果の一部が形になり始めた。同研究所では、動画対応のモバイル端末を保有するユーザーの行動分析や、ストリーミングコンテンツサービスでのユーザー交流に関する研究を進め、ダイナミックコミュニティーの実現へ役立てるという。

 まず、動画対応のモバイル端末を保有するユーザーの行動研究では、動画コンテンツを「受動的」に楽しむ場合と「能動的」に楽しむ場合の2つの特徴が存在することが分かった。受動的に楽しむのは、ワンセグなどテレビ放送を視聴するユーザーで、移動中などに「その場」にあるコンテンツを楽しむ。一方、能動的に楽しむのは動画再生機能を利用するユーザーでは、テレビの録画番組など見たいコンテンツを事前に端末へ保存して好きなタイミングで視聴する。この行動分析の結果は、双方のユーザーを結びつけていくサービスの実現に役立つといい、さらに研究範囲をコンテンツの内容や提供方法、端末技術の開発、コンテンツのデータ構造、検索機能といった領域に広げる予定だ。

事業化も視野に入れるストリーミングコンテンツとユーザー交流の融合

 ストリーミングコンテンツサービスの研究では、例えば端末の画面を「コンテンツ領域」と「コミュニケーション領域」に分けて、ユーザーがコンテンツを視聴しながら、携帯カメラで撮影したユーザー自身の画像やアバターの画像を用いて、ほかのユーザーと会話などを楽しめるようになるという。さらに、コミュニケーションの内容に関連した広告をリアルタイムに配信する仕組みの導入も視野に入れており、日本HPでは事業化の可能性についてすでに検討を始めたという。

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