HPの先端技術が生まれる場――HP日本研究所の活動(2/2 ページ)

» 2008年09月13日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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HPの研究は外でも通じる?

 HP Labsでは外部機関との共同研究も推進するようにし、従来は大学などの教育機関にとどまっていた共同研究の範囲を政府や自治体、企業に広げている。HP日本研究所は今年度、東京海上日動システムズと仮想3Dコミュニティーサービス「meet-me」を運営するココアとの共同研究を実施している。

 東京海上日動システムズとの共同研究は、社内SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の活性化に向けた方法を検証するもので、日本HPが2007年11月に開設した技術系社員の社内ポータルとSNSサイト「Collabo」のノウハウが外部企業の社内SNSに活用できるかを検討している。Collaboでは社内の技術データベースの共有や社員同士のコミュニケーションが行われている。

 1月からはWikiやブログの機能を導入して、HP日本研究所がこれらのコミュニケーションが社員連携の強化につながっているかどうか、業務生産性の向上に結びついているかを分析し、サービス内容に反映させてきた。現在では技術系社員の約6割が毎日アクセスするようになったといい、これらの施策は東京海上日動システムズが導入する社内SNSにも有効であるかどうかを研究する。

 ココアとの共同研究では、meet-meの中で行われるユーザーの行動分析をHP日本研究所が担当しており、コミュニケーションを活性化させていくための手法について仮説と検証を実施しながら手法の汎用化、さらには3Dという特殊なオンラインコミュニティーサービスの可能性について研究を進めている最中だ。

研究をビジネスに

 プリス・バナージー上級副社長が率いるHP Labsは、米カリフォルニア州パロアルトのHP本社や日本、中国、英国、ロシア、インド、イスラエルに開設され、約600人の研究者が在席。HP日本研究所の活動も今春から本格稼働し、現在は約20人の研究者が在席している。

 各Labsでは、HPが策定した研究理念の中から2〜3の理念に基づく具体的なテーマを定めて研究を行う。1つの研究テーマには10〜30人の研究者が参加し、研究者は参加希望したテーマの研究を行っている地域のLabsに所属して研究を行う体制だ。

 小田氏によると、研究所の改革はインパクトのある研究テーマへの注力と開かれた革新の実現、技術転移の迅速化が目的であった。従来は約150もの小規模なプロジェクトが実行されていたが、再編では技術的に重要性の高いテーマへの注力や外部機関との連携強化、事業化への支援強化を実施していくことで、HP Labsの成果を市場へ速やかに反映させていくのが狙いだという。

 「再編に当たっては、ボトムアップによる研究テーマを重視し、今後5年間で実施していくものを選定している。各テーマは所長(バナージー氏)に直接リポートする仕組みで、1年ごとに研究成果を十分に精査していく体制となった」(小田氏)

 HP Labsで行われる各プロジェクトは、1年ごとに「アドバイザリーボード」と呼ばれるチームで研究成果が評価され、事業化する場合には研究員が「Tech Transfer Office」という事業準備チームに参加して、事業が軌道に乗るまでをサポートしていくという。小田氏は、「こうしたわれわれの研究成果がビジネスとして有用なものであるかを実証していくことで、HPとしての新たな可能性を生み出したい」と話している。

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