優れたリーダーは「人と人のつなぎ方」がうまい職場活性化術講座(2/2 ページ)

» 2008年09月19日 13時02分 公開
[徳岡晃一郎,ITmedia]
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知識経営時代のリーダーの条件とは

 しかし、知識経営の時代では、それ以上のことが求められる。そこでは人々がお互いに暗黙知(ノウハウや思いや独自の思考など)を出し合い、共創していくことが重要であり、互いの信頼関係がとても重要になる。無難以上のことが求められ、無から有を生み出すコミットメントが必要になる。アイデアをただで盗まれるかもしれない。また、日常の仕事で忙しくて、そのような知恵を出す場に参画するのは面倒だと思うかもしれない。みな忙しかったり、クライアント先に常駐しているものばかりで顔を見合わせる機会がないかもしれない。リーダーは、このような職場の風景の中で、無難以上のコミットをみなに求めていかねばならないわけだ。

 これは強制では難しい。仮にできたとしても一過性で長持ちはしない。みなが知識経営の時代にふさわしい動きができるよう、相互信頼を打ちたて、モチベーションを持って働き、会話を弾ませるコミュニティーが必要になる。まずここからリーダーは組織を整えていくわけだ。

 そのためにリーダーは職場がコミュニティーとなる条件を知っておく必要がある。それらは、

  • 部下が何を期待されているか分かっている
  • 日常的に、成果を認められ、ほめられる
  • 上司が仕事のことだけでなく、1人の人間として関心を持ってくれる
  • 成長をサポートしてくれる人がいる
  • 自分の意見が尊重されていると感じる
  • 自分の仕事が、組織の大きな目的に貢献していると感じる
  • 職場に友達がいる
  • 仕事の成果がフィードバックされている

などだ。

 ざっと見ると常識的なことのようにも思えるが、読者の皆さんの職場ではどうであろうか。自分のマネジメントスタイルとして、部下にそのように感じさせるマネジメントができているであろうか。恐らく皆さんは上記のような環境で社会人として育ってきただろう。しかし、最近はそういう恩恵を受けられない20代、30代が増えているのが現実だ。

 このようなコミュニティーを作っていくためのリーダーシップ・コミュニケーションのカギはいくつかある。その1つが、「意義構築者としてのコミュニケーション」だ。

 自分たちのしている仕事の意味、会社の成果に対する意味、社会における意義、世界とのつながりなど、より広い文脈で自分たちの仕事を関係づけるコミュニケーションだ。より上位の価値と自分たちの仕事を結びつけることによって、リーダーは職場のメンバーがみな共通の目的の下で協働していること、そしてその行き着く先がより多くの人にとって意味のあることだと示すわけだ。

 例えば、自分は自動車メーカーでドアハンドルの設計をしているが、そのドアハンドルはどんなクルマのハンドルなのか。そのクルマがハイブリッドカーであれば、エコの代名詞であり、地球環境に優しい自動車会社のプライドを持てる。またエコに関する関心を高めるように問題意識(例えば、ハイブリッドカーで地球のCO2をどれだけ減らすことができ、それで氷河の消滅がどれくらい救えるかなど)を投げかければ、自分たちの仕事の意義を誇らしく思え、職場の団結も高まるだろう。

 そしてリーダーはこうした問いをすべて説明してしまうのではなく、問いの投げかけをし、職場全体で考えさせ、気づかせることで社員に大局観を学ばせることもできる。このようにシュリンクしがちな目線を引き上げ、よりいい仕事を楽しい職場でしていきたいものだ。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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