現実解に育つSOA、弱点はデータ品質の維持――米Informatica日本法人は「好調」

米Informaticaで上級副社長兼CTOを務めるジェームズ・マカリアン氏はSOAのリスクはあるがソフトウェアで解決できると話す。日本法人の内田社長は「潮目が変わった」と強気だ。

» 2008年09月24日 08時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 「SOAがシステム構築の主流として受け入れられるようになってきた」

 こう話すのは、米Informaticaで上級副社長兼CTO(最高技術責任者)を務めるジェームズ・マカリアン氏だ。Informaticaは、企業の基幹システムでデータの質を確保するETLツールの最大手として知られる。データの質がSOA(サービス指向アーキテクチャ)でシステムを構築する際に非常に重要になってくるという。

SOAの評価に時間かかる

 米国のユーザー企業の担当者についてマカリアン氏は「SOAに利点があるかどうかの判断に時間がかかっている。SOAにはリスクもあるからだ」と話す。

米Oracleに10年間在籍後、1998年にInformaticaに入社したマカリアン氏

 SOAを構成するのは、購買、受注など業務における既存のシステムの機能を切り出したWebサービス群だ。「1つのWebサービスを使って複数の異なるシステムを作るのは難しい」(同氏)ため、そこにリスクがある。例えば、顧客情報などを複数の部門が別々の名前や形式で管理するのはよくある話で、その場合、1つのWebサービスで統合的にシステムを構築できなくなる。

 そこで必要になるのが、複数の部門が持つデータ形式の違いなどを変換技術などによって吸収し、SOAで使うWebサービスに合わせる仕組みだ。そこでマカリアン氏は「“データサービス”が重要な役割を担う」と強調する。データサービスは「Webサービスの特別なタイプ」と同氏は説明する。同社が製品として提供する基盤ソフトウェアの機能だ。1つのWebサービスを複数の部門にまたがって統一的に利用するために、データの質を管理する。SQLアクセス、RSSなどの技術を交え、異種混合環境でのSOAによるシステム構築を手助けする。

もう1つの鍵はデータガバナンス

 データサービスは、大きく言えばデータを作る側の立場に立った考え方である。一方で、ビジネスユーザーなどデータを使う側から見た場合のキーワードが「データガバナンス(統制)」だ。

 データガバナンスを強化するために、多くのユーザー企業が導入を進めているのがマスターデータ管理を実施するソフトウェア「MDM」だ。MDMは、1つの事柄を複数部門がそれぞれ違う名前で管理しているような場合に、「ハブ」のようなイメージで複数の名前を統一して定義する。

 保険会社が世帯主である人物を評価する際、妻子、家族なども考慮し、世帯として計算する。この場合、家族は世帯主と苗字が異なる可能性がある。データを見ただけでは判断がつかない場合もあるため「こうした関係の定義は実際にこの世帯主と関わりを持つビジネスアナリストが受け持つことになる」(同氏)。営業担当者など顧客を直接理解する人でなければ分からないことは多い。

 企業は情報の関係をメンテナンスし、常に正しく修正する必要がある。業務効率の追求だけでなく「コンプライアンスの観点からも重要」(マカリアン氏)だ。

潮目が変わる日本市場

 日本市場の動きはどうか。内田雅彦社長は「昨年に比べてデータ統合の基盤としてインフォマティカ製品を考える企業が増えてきた。“ETLツールの会社”というイメージが明らかに変化しつつある」と話す。

日本法人の内田社長。「近々大きな提携を発表する予定」と話す

 特に変化を見せているのは外資系企業の日本法人や海外と活発に取引をしている企業だという。背景には「SOAなどの技術面の進歩がある」(同氏)。SOAを通じてデータの質を高めるという取り組みを企業がイメージしやすくなった。

 その中でインフォマティカは「データ統合に特化するユニークな位置づけが認知されてきた。他製品にとらわれず、どんな標準が出てきても対処できる会社として評価されている」(同氏)という。

 内田氏は「案件の単価は2倍になった。これまでにはなかったような規模だ。業績にも反映しつつある」と強気。日本では「IBMとインフォマティカの2社を見て購入する製品を選ぶ状況が多くなっている」というほど、選択肢として力をつけているとアピールする。成熟した北米市場でも20%の成長を続ける同社では、2004年に開設した日本法人はまだ「新興市場」の位置だ。

 「ゆくゆくは日本法人をInformatica全体の柱にする」(内田氏)

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