グレイトCIOへの道――コアコンピタンスの議論に異議ありサバイバル方程式(1/2 ページ)

CIOに欠けていてはならない重要な資質、それは人間力を前提とした経営者としての総合力である。

» 2008年09月30日 15時09分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

12のコアコンピタンス

 前回まで、CIO(Chief Information Officer 最高情報責任者)の重要性を説いてきたが、しからば一体CIOの役割とは何で、その育成はどうあるべきなのか。

 それを示すのが、CIOのコアコンピタンスである。CIOのコアコンピタンスは、CIOが備えるべき知見と能力を具体的に表し、CIO活動や育成の指針となる。

米国では、1996年米国大統領府行政管理予算局から発布された米国IT管理改革法(ITマネジメント改革法、Clinger Cohen Act)に則って、主に自治体のCIOの技術や役割が12のコアコンピタンスと571の学習目標にまとめられている。その後手が加えられて、2006年連邦CIO協議会から最新版「CIOコア・コンピタンスと学習目標」が発表されている。

 12のコアコンピタンスは、次のとおりである。

(1)政策と組織(2)リーダーシップと管理能力(3)プロセス・変革の管理(4)情報資源戦略・計画(5)IT業績評価のモデル・手法(6)プロジェクトマネジメント(7)資本計画と投資評価(8)調達(9)電子政府(10)情報セキュリティ(11)エンタープライズ・アーキテクチャ(12)技術(経営と評価)

 わが国のCIOコアコンピタンスは米国を基準に作成されたとされるが、日米CIOコアコンピタンス対比表が、「CIOの新しい役割」(岩崎尚子著、かんき出版)に示されている。

CIOコアコンピタンスの評価

 しかし、わが国で規定されたCIOコアコンピタンスは、これで充分なのだろうか。

これを基準に、CIOの役割や活動内容が解釈され、CIO育成の指針にされるとなると、どうしても疑問が残る。

 まず肯定的意見であるが、コアコンピタンスについての日本版と米国版の大きな違いとして、日本版には (1) 行政機関の特徴やアクセサビリティなどの項目が付加されている、(2)学習項目ごとによく整理されている、(3) 新しいコアコンピタンスとして、「社会環境と技術」を追加し、将来環境や社会問題解決の領域にまで踏み込んでいる、としている点である(上掲書)。

 否定的意見としては、(1)米国のCIOの現状・歴史・問題点などから総合的に検証した結果、現状のCIOコアコンピタンスは、ブロードバンド・ユビキタス時代への適応では、充分に対応していない、(2)先行する米国のCIOコアコンピタンスを参考に日本でも経産省が中心となって、日本版CIOコアコンピタンスが策定されているが、日米企業の組織文化、大統領制対議員内閣制に始まる行政・官僚制度など、歴史・文化の根ざした相違点も少なからず存在する、(3)米国版CIOコアコンピタンスは米国内の官民融合を図ることはできても、普遍化させることは困難である。特に欧米対アジア諸国における組織・社会・文化の差は大きい、としている(「米国CIOコア・コンピタンスの質的変化に関する考察」早大小尾敏夫教授、他)。

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