スマートフォンの企業導入大作戦

スマートフォンを“歓迎”するための心構えエンタープライズスマートフォン(2/2 ページ)

» 2008年10月01日 06時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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“ケータイ”じゃありません

 企業としてスマートフォンを受け入れる場合、伊藤氏は「“携帯電話だ”という概念は持たないでいただきたい」と話す。「スマートフォンには、カメラやマルチメディア再生といった一般の携帯電話にも搭載されている機能がありますが、ビジネスで利用するには管理者がコントロールできなければなりません。機密情報を扱う場所では盗撮による情報漏えいを防止するために、カメラ機能を強制的にオフするなどの管理が必要です」(同氏)

 企業システムとしてのスマートフォン導入には、まず、「何でもできる」というスマートフォンへのイメージを取り除く。その上で、一般的なシステム導入と同じように「なぜ、その仕組みを取り入れるのか」(目的)や既存システムとの連携(構築)、ユーザーとなる経営層や一般社員への定着(運用)という各フェーズで明確なシナリオを考えていく必要があるという。

 例えば、「コミュニケーションの活性化」という経営課題では、業務連絡体制を強化する目的で、相手の状況(通話やメールができる状態かどうか)に応じて電話やメール、メッセンジャーなどの連絡手段が選べるユニファイドコミュニケーション(UC)を用意する。移動の多い社員をサポートするためにスマートフォンも活用する。スマートフォンも含めたUCの仕組みが利用されるように、ユーザーへの教育を行う。管理者がスマートフォンやUCの運用をツールで管理できるようにするといった具合だ。

 マイクロソフトの場合、コミュニケーション環境を改善するソリューションとして、Exchange ServerやUCプラットフォームのOffice Communications Serverなどがあり、Windows Mobileを搭載するスマートフォンにも対応する。

 こうして目的と手段を明確にした上で、クライアント端末としてのスマートフォンを適切に管理できる仕組みを用意する。「Exchangeにはスマートフォンの利用ポリシーや紛失時に遠隔操作でデータを消去するといったセキュリティの管理機能があります。より本格的に管理したいというニーズにも対応するため、System Centerでは“Mobile Device Manager”というツールも提供し、企業としてスマートフォンを運用していくために必要な環境を拡充しています」(伊藤氏)

特別な対応は要らない

 スマートフォンをシステムとして導入、運用していくためには、具体的にどのようなポイントへ注目しておく必要があるのだろうか。伊藤氏は以下の点を紹介している。

導入相談はいつもの窓口を

 スマートフォンシステムの開発や構築、サポートまでの技術やノウハウに長けたシステムインテグレターが増えつつあるが、まずは普段から付き合いのある企業に相談をしてみるのが第一歩である。

 「その会社で実績があれば基本的に安心ですが、難しいという場合には実績のある企業を紹介して、新しく対応を依頼することになるでしょう」(伊藤氏)。通信事業者によっては、スマートフォンシステムを数多く手がけているところもあり、システムインテグレーター以外にも窓口は存在する。

運用はPCと同様に

 多機能なクライアント端末という点では、PCもスマートフォンも同様である。特にセキュリティ対策はPCと同レベルのものを備える必要があり、紛失時の情報漏えい対策は不可欠だ。また、スマートフォンのOSは汎用的であるためマルウェアの標的にされる。報告数は少ないものの対策は必要だ。

 ライセンス周りも確認すべきポイントになる。例えばマイクロソフトの「クライアント アクセス ライセンス」(CAL)では、PCやスマートフォンを区別していない。「デバイス単位での場合、導入するスマートフォンの台数に応じたCALが必要になります」(伊藤氏)

オピニオンリーダーを作る

 スマートフォンは、登場からの歴史がまだ浅く、ユーザー数も少ないのが実情だ。スマートフォンを知らない社員にも利用してもらえるようにするためには、リーダーシップを発揮して、スマートフォンを使うメリットや使い勝手を根気よく啓蒙していく人材が欠かせない。

 また使い勝手も注意したい。例えば、Windows MobileとPC版Windowsの操作性は類似しているが、Windows MobileではPCのようにウインドウのバツボタンを押してもアプリケーションは終了しない。いくつもアプリケーションを立ち上げるとメモリを圧迫し、無用なバッテリー消費を招くことにもなる。


 スマートフォンに関する話題は、端末そのものの性能や機能に目が奪われがちだが、企業として導入する上では、スマートフォンはあくまでシステムを構成する1つの要素になる。運用や社内への定着化も含めて、システムとして安定的に使われるようにするための緻密な戦略が必要になるといえよう。

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