日本オラクルが好業績でも危機感を募らせる理由Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年10月06日 11時48分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

“ワンフェース・ワンオラクル”を実現へ

 日本オラクルはこのプランの基本方針として、「お客様志向の徹底」をベースに、「製品事業の強化」と「市場カバレッジの強化」に取り組むことを掲げている。遠藤社長によると、製品事業の強化は「オラクル製品を日本のお客様に満足していただけるように、責任を持って提供し続けること」、市場カバレッジの強化は「これまで見過ごしていたような案件にも積極的にアプローチすること」がポイントだという。

 ただ、この3つの基本方針とも、考え方として決して目新しいものではない。遠藤社長も「当たり前と言われればその通り」と前置きしたうえで、「これまで当社の状況をつぶさに見てきて、当たり前のことが必ずしも当たり前のようにできていない部分があると認識している。まずは、その当たり前をきちんと実践できるような体制を作り上げたい」と強調した。

 では具体的に、どのような「トランスフォーメーション」を行おうとしているのか。最大の目玉は、営業体制の一本化だ。これまでソフトウェアプロダクト部門の営業体制は、データベースとミドルウェアを扱うテクノロジー製品部門とビジネスアプリケーション製品を扱う部門に分かれ、それぞれ個別に活動していた。10月からはその垣根を取り払い、業種毎に再編成した形で営業部隊を1つにした。

 遠藤社長はその狙いについて、「お客様に対して“ワンフェース・ワンオラクル”を実現し、担当営業マンがオラクルの全製品を駆使したトータルバリューを武器に、業種毎、お客様毎に最適なソリューションを提供できるようにした」という。

 一方で、製品およびソリューションは個々に強化し、業種毎に編成された営業部隊を横断する形で適用範囲を広げていく構えだ。さらに同社の生命線であるパートナー企業との協業においても、この新しい営業体制そのものがビジネスチャンスを一層拡大するテコになるとみている。

 同社ではソフトウェアプロダクト事業において、主力のデータベースを伸ばすのもさることながら、ミドルウェアとビジネスアプリケーションをどれだけ伸ばせるかが、今後の成長の鍵を握る。今回、そうした製品部門の営業の垣根を取り払ったのも、営業リソースを最大限に活かすためにほかならない。

 ただし、この新しい営業体制を機能させるためには、全製品を駆使したソリューション提案を行える営業マンの育成が絶対条件だ。単純に比較はできないが、営業体制において製品別から業種別に組織改編を行ったケースは、ITベンダー大手でもこれまで幾度かあった。そして大いに効果を生み出したケースもあれば、効果が上がらなくて元の体制に戻したケースもあった。その分かれ目は、営業マンのスキルとそのスキルアップを支える体制にあるといえる。日本オラクルが思惑通り、効果を上げることができるかどうか注目される。

 遠藤社長は、今回のトランスフォーメーションプランの実施を、日本オラクルにとって「第2巻・第1章の始まり」と語り、社長就任時にスタートさせた「第2巻」の最初のアクションであることを強調した。

 そして、このプランが中期経営計画に代わるものであるとし、その理由をこう語った。

 「中期経営計画というと、先の話のようで社員に緊張感が生まれないと思った」

 この感覚は、どの企業にも必要だろう。

PlanITトップはこちら

過去のニュース一覧はこちら

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ