「どげんかせんといかん」中小企業のIT活用IT Oasis(1/2 ページ)

中小企業の業務効率アップは、いかにして意思決定者に迅速、正確に役立つ情報を提供するかがポイントだ。IT活用もこのポイントを研ぎすます方向に進めるべきである。

» 2008年10月10日 13時17分 公開
[齋藤順一,ITmedia]

初期投資のコストを抑えるには

 日本のモノづくりを支えているのは25万社余の製造業に属する企業である。このうち大企業は1%弱の2000社余り、残り99.2%は中小企業である。製造業の基幹業務はモノづくり、生産だ。世界的な金融不安が現実のものとなった今、実体経済の中心である製造業への打撃は軽微なものでは済まされないだろうと予測される。そうなれば当然、都市部だけではなく、地方の中小零細企業にまで被害は及ぶ。宮崎県知事ではないが、まさに「どげんかせんといかん」問題なのだ。

 モノが売れなくなる状況では、知恵を絞り付加価値の高い製品を作りだすことが迫りくる荒波に対抗する手段といえるが、どんな製品を作るにせよ生産現場の徹底した効率化が急務となるはずだ。しかし効率化のために中小企業の生産現場で活用されているはずのITには、いろいろと不都合を生じているものがある。

 中小企業の生産管理の入口は得意先とのEDI(electronic data interchange)である。得意先大企業の指導、要請によって、導入が図られておりWeb-EDIが主流となってきている。

 受注、内示、Forecast(生産予測)情報などがWeb-EDIによって提供される。 EDIは概念どおりに活用されれば、電子データによって受発注を管理し、生産現場の事務工数を減らせるので、発注する大企業も注文を受ける中小企業も、より効率的にモノづくりを進めることができるはずだ。

 しかし、現実にはさまざまな問題が生じている。大企業-中小企業間のEDIは大企業の独自開発システムであり、標準化がなされていない。このため、複数の大企業を得意先に持つ中小企業では得意先の数だけEDIの導入が必要、得意先の事情でシステム変更がなされる、あまり注文がないのに使用料を取られるといった問題が発生している。

 こうした事情から中小企業の内部システムと連結されていないケースがほとんどである。

 中小企業間のEDIや規模の小さな中小企業のEDIの重要性、必要性については国も認識している。中小企業の数の多さや投資規模の小ささを意識してか、「中小企業がIT活用に積極的に取り組んでいくためには、初期投資コストやIT人材の不足といった課題に対応していくことが必要であるが、こうした取り組みのうちの1つとして、中小企業におけるSaaS・ASPの有効な活用が期待される」(2008年度中小企業白書)としており、インターネットの活用を視野に入れているようである。

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