クラウドビジネスに向けたMicrosoftの本音Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年10月14日 09時32分 公開
[松岡功ITmedia]
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バルマーCEOがみせたクラウドOSへの執着

 大場執行役はさらに、Microsoftがクラウド上で展開する、3階層からなるサービスプラットフォームについて説明した。それによると、最上位の「Finished Services / Attached Services」には、コンシューマーユーザーやIT部門を持たないような中小企業向けの「Live」サービス、エンタープライズ向けにExchangeやOffice SharePointなどをオンラインで提供するOnlineサービス、サードパーティによるアプリケーションやソリューションサービスが位置付けられている。

 また、2番目の「Building Block Services」はいわゆる開発プラットフォームで、同社の「.NET Framework」のアプリケーション開発手法を採用したものだ。.NET相当の機能に加えてLiveの機能をAPI経由で提供することができる。これにより、例えばコンシューマー向けに提供されているLive機能を、企業のアプリケーションの中で自らのサービスとして活用できるようになる。そして一番下の「Foundation Services」は、同社のデータセンター機能をサービスとして提供するものである。

 大場執行役によると、「3階層をサーバ環境に置き換えると、最上位はアプリケーション領域、2番目は開発プラットフォーム領域、一番下はOS。このOSに相当するFoundation Servicesをどのような形でパートナーやお客様に提供していくかについては、現在社内で検討中」とし、最後にこう強調した。

Microsoft Microsoftがクラウド上で展開するサービスプラットフォーム

 「当社はこの3階層すべての構成要素においてすでに確固たる実績を持っており、それぞれの階層のサービスを柔軟に組み合わせることもできるので、安心して利用していただけるサービスプラットフォームだと確信している」

 ちなみに、クラウド上のサービスの観点からこの3階層を捉えると、最上位はSaaS(Software as a Service)、2番目はPaaS(Platform as a Service)、一番下はIaaS(Infrastructure as a Service)と位置付けられる。Microsoftがこのように全方位でクラウドコンピューティング・サービスに取り組むことは想定できたが、バルマーCEOの「クラウドOS」をめぐる発言には、同社の本音が垣間見えたようで興味深かった。

 CNET Networksの報道によると、バルマーCEOは今月2日、フランスで行った講演で、「PC、携帯電話、サーバ用のOSがあるように、ネット上で動作する新たなOSも必要だ。おそらくは『Windows何々』という名称になるだろう」と語ったという。このクラウドOSの名称をめぐっては「Windows Cloud」が有力視されていたが、正式な発表が予想されるPDCのセッションのテーマなどから「Windows Strata」が急浮上しているようだ。

 名称はどうあれ、筆者が感じたのはバルマーCEOのクラウドOSに対する執着だ。確かに、クラウド上ではWindows Serverを進化させたOSが必要になるだろう。だが、同氏の発言にはクラウドOSを浮き立たせることで、クラウド上でもMicrosoftが長年培ってきたOSビジネスの再現を図ろうという思惑があるのではないだろうか。

 例えていえば、Microsoftは大きなレストランを運営することもできるし、競合するレストランに豊富な食材を提供することもできる。同社は今後、そのバランスをどうとっていくのか。PDCで明らかにされるクラウド関連サービスの内容とともに、クラウドビジネスの展開の仕方に注目したい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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