スマートフォンの企業導入大作戦

BlackBerryによる社内システムの作り方エンタープライズスマートフォン(2/2 ページ)

» 2008年10月17日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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ミッションクリティカルにも対処

 BlackBerryの端末を利用するのは経営層から一般社員までとさまざまだが、高橋氏は、BlackBerryを電子メール配信インフラの1つとしてみると、サービス停止などが許されないなどミッションクリティカルなシステムになると解説している。

 このため、BESでは主に3種類の冗長化構成ができる。1つはBESとユーザーデータベースを複数用意して、バックアップ用システムをホットスタンバイの状態にしておく方法である。その際にはユーザーの登録情報などを定期的にバックする必要がある。もう1つは複数台のBESと1つのユーザーデータベースを利用する構成で、すべてのBESをアクティブにしておく。この場合では、ユーザーデータベースも念のために冗長構成にするといった対策が求められる。

 最後は冗長化構成を管理する「Neverfail」というソフトウェアを利用し、2つ以上のBESとユーザーデータベースを同期させる方法で、片方のBESが停止しても自動的に予備のBESに切り替えができる。このほかにも、VMwareプラットフォームの仮想化環境でBESを運用しているケースもあるという。

 なお、グループウェアと電子メールシステムが異なる場合や、電子メールを利用せずに業務アプリケーションだけをモバイル利用する場合には、RIMが提供する「BlackBerry Mobile Data System」やNTTドコモが8月から提供している「ブラックベリーインターネットサービス」を組み合わせることで利用できる。

モバイルならではの留意点

 高橋氏は、BlackBerryなどのスマートフォンシステムを運用する上での注意点として、「関連するサービスが多数あることに留意していただきたい」と話す。BlackBerryの場合、自社の設備のほかに、RIMが提供するBESやBlackBerry Infrastructure、端末がある。企業とBlackBerry Infrastructure間のネットワークサービスや携帯電話の事業者網も介在する。

 また、端末にはQWERTYキーボードが搭載されており、10キーで操作する一般的な携帯電話に慣れたユーザーにとっては、スマートフォンの入力を難しく感じるケースもある。「社内にスマートフォンが定着するよう、できればスマートフォンの使い方に慣れた人がトレーニングなどでリーダーシップを発揮することが望ましい」(高橋氏)という。

マルチキャリア対応のMSシステム

Windows MobileとSCMDMの基本構成

 マイクロソフトは、スマートフォン向けOSの最新版「Windows Mobile 6.1」とスマートフォン集中管理ツールの「System Center Mobile Device Management(SCMDM)」で大規模なスマートフォン端末の運用を集中管理するプラットフォームを提供する。同社のプラットフォームは、特定の携帯電話事業者網に依存しないマルチキャリア環境に適しているという。

 同社のシステムでは、SCMDMをDMZ上とイントラネット上に2台配置し、スマートフォン用電子証明書を用いたVPN接続で社内の業務システムにアクセスできる仕組みとなる。DMZ上のSCMDMはVPN接続時のゲートウェイ機能を果たし、イントラ上のSCMDMは端末の集中管理とExchange ServerやActive Directoryなどの各種サーバとの連携を行う。

 端末からアクセスする場合は、まず電子証明書を用いたSSL VPN接続でリバースプロキシサーバを介してDMZ上のSCMDMにアクセスし、ユーザー認証を行う。認証に成功すると、「モバイルVPN」というIKEやIPSecなどを利用したVPN接続に切り替えてイントラ上のSCMDMへ接続し、業務アプリケーションが利用できるようになる。

 Windows MobileとSCMDMを利用するシステムでは、リモートアクセス用に電子証明書の認証局設備などを用意しなければならないが、数千台規模の端末運用に対応できるなど、本格的なものになる。Windows Mobileを採用する端末は2009年春までにKDDIを含むすべての携帯電話事業者およびPHSのウィルコムから提供されるようになるため、広範なサービスエリアからスマートフォンでのアクセスが可能になる。

 システムテクノロジー統括本部の中島憲彦ソリューションスペシャリストは、「最新のOSバージョンが必要になるが、今後キャリア各社から端末が提供される。既存のシステム環境と連携がしやすいのも特徴」と話している。

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