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» 2008年10月21日 07時00分 公開

“「考える組織」への変革”を促すビジネスインテリジェンス:第1回 間違ったBIはどこへ行く (1/2)

BIはレポート作りのためのツールではない。情報をもとに的確な行動を考えるためのツールである。BIを間違って捉えていると、企業の将来は見えてこないだろう。

[米野宏明(マイクロソフト),ITmedia]

 ビジネスインテリジェンス(BI)は20年近く前に誕生した用語で、本来はビジネス上の意思決定を支えるITやその活用方法全体を示す。しかし一般にはOLAP(オンライン分析処理)に代表される「データ分析」を指すことが多く、長らく「一部の専門家」のためのものだった──これも今時珍しい論調でもないだろう。しかし、近年よく見かける「全社員のためのBI」セミナーなどをのぞいてみても、その内容に矛盾が目立つ。当たり前のことだが、「安価になれば」「画面がきれいになれば」「操作が簡単になれば」全社員がBIを使うようになる、などということはあり得ないのだ。

 今回から数回に分けて、本来目指すべき、組織全体の意思決定力を向上させるBIのあり方、そして組織変革システムとしてのBIの近年の進化と意義について解説していきたい。

BIは「専門家のためのアプリケーション」?

 残念ながら今も高い割合で、BIは一部の専門家のためのアプリケーションとして買われている。経営企画やマーケティング、あるいは経理財務で企画に携わる従業員は多くの場合、分析レポートという「アウトプットを作る」ためにこのBIアプリケーションを使っている。出力された分析レポートは経営者や管理者に渡され、例えば経営計画会議のような場での意思決定材料となる。つまり、「機能」の利用者と「価値」の利用者が異なるのだ。結果、会議では必要最低限の結果情報が整然と並んだ「読みやすいレポート」が使われる。当然会議の場でのインタラクティブな分析などは行われない。BIアプリケーションは、突っ込み所がなく美しい、別の言い方をすれば「それっぽく」取り繕われた凡庸な報告書を作るための道具、として扱われている。

 分析のアウトプットだけで意志決定するなど、電子メールを部下に代筆させるのと同レベルだろう。

 統計解析のイメージが先行しているせいか、BIは条件反射的に拒絶されやすい。面白いことにITベンダーでさえ事情は変わらず、複雑で巨大なDBアプリケーションは手組みするのに、BIと言った途端に顔をしかめて両手で拒絶する。わたしは両方の経験があるが、トランザクション設計のほうがよほど複雑で大変だ。誰もがこの状態では、いくらツールが進化しても、そこから適正な価値を引き出すことは期待できない。全員の意識を変える必要があるのだ。

BIは情報バリューチェーンを構成する要素にすぎない

 もはやBIは分析ツールではないし、また導入するかしないかを悩むべき対象ですらない。企業内で情報資産が対流し、次々と価値を生み出していくためには必要不可欠な要素だ。これだけ膨大な情報が世に溢れ返ると、利用できそうな情報の量は増える一方で、逆に真実を見出すことを阻害し始めてもいる。最終的に真実を語るのは事実、すなわちデータと実体験のみである。従ってわれわれは断片的な事実を寄せ集め、自分自身で真実に近づくことが必要になる。しかも、競争相手より早く、正確にだ。

分析 情報やデータを分析しながら真実に近づいていくことがビジネスに求められている

 再び経営者の意思決定を例に考えてみよう。ビジネスサイクルが短い現代では、過去と将来のつながりが見えにくくなる。そのため、「現場では本当は何が起こっているのか」、「一見無意味な例外データが実は将来の変化の兆しを示しているのではないか」、といった知恵の絞り方が重要になる。経営者や管理者は、組織の継続的な成長のために、変化をできるだけ早く事前にキャッチし迅速に戦略を修正する責任がある。それには上記のような気付きや仮説を立て、それを素早く検証するサイクルが求められる。誰かが作った美しくまとまった「レポート」に頼っていては、現代の激しい変化についていくことなどできないのである。

 これは組織のあらゆるレベルにおいて同様のことが言える。部門や業務の管理者、また現場の従業員も、責任範囲は異なるものの、市場や顧客の変化に応じた意思決定を行っている。しかも現場に近づくほど、その頻度は非常に高く、逆にそのための時間やお金は少ない。分析専門家にレポート作成を依頼する時間やお金などないし、そもそも現場ニーズを反映したレポートを作成できる専門家など普通は存在しない。

 経営者から現場の担当者まで、素早く的確に真実に近づくために自ら「考える」ことを手伝うのが、BIの真価だ。これら異なる背景を持つユーザーにそれぞれ最適なBIは、「最終的に得たいものは何か」「それに必要な頻度と精度はどの程度か」で決まる。最終目的さえはっきりすれば、どのようなデータを、どのような経路で、どのような価値に変換しそれを誰に渡すのか、といった情報のバリューチェーン、あるいは情報エコシステム(生態系)とも言うべき情報活用システムの全体像までが明確となる。

 しかし残念ながら、そのBIの利用目的をはっきりさせないままに、不必要なデータの統合作業に悩まされたり、本質的ではない部分に過大な投資をしたりするケースが実に多い。間違ったBIは確実に企業を不幸に陥れる。

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