着実な「業務知識の世代交代」が将来のリスクを減らす闘うマネジャー(1/2 ページ)

長崎県庁では「高止まりしている運用経費の削減」を目的に汎用機のダウンサイジングを進めているが、もう1つ大きな目的がある。「システム上の業務知識の世代交代」である。

» 2008年10月23日 16時27分 公開
[島村秀世,ITmedia]

「システムのことはプロに」の実態

 県庁の職員は年を重ねるにつれて現場から離れ管理職となり、やがて退職する。世代交代をしていかなければ、システム上の業務知識は分散・霧散し、運用経費の増大を招くだけでなく、リスクという怪物を育ててしまう。具体的に言うと、障害が発生したとき、トラブル箇所の特定ができない、回避策が打てない、そして最終的に業務停止に伴い金銭的損失を発生させてしまうという怪物だ。

 先頃あった全日空のシステム障害はまさにこの例で、障害のあった発券・搭乗システムは30年近く汎用機で動かしてきているという。2006年にオープン系への移行を決定しているが、当時、担当するベンダーと10年間の包括的委託契約を結んだというから、システム上の業務知識の世代交代は職員の間で行われるものというよりは、ベンダーにより多くを担ってもらうものであったように思う。

 ところで、不思議に思うことがある。県庁であれば、20代ないし30代においてシステム開発に参画した職員を、10年後、世代交代のために呼び戻すことは可能だが、ベンダーではどうだろう。筆者の経験からいうと、不可能ではないかと思う。大手ベンダーでは、マネジメントが主な仕事で、開発は下請けが行うため、10年前の開発メンバーは消息さえつかめないことが普通だからだ。さらに、ベンダー職員は半年〜2年単位でプロジェクトを異動するため、10年前のことなどほとんど覚えていない。また、その間に行われた改修や新たに投入された技術も見えないため、「下手なことをすれば責任問題ともなりかねない」と考えるのが自然だし、現在、別の仕事をしているから、できるだけ避けて通ろうとする。

 結局のところ、「システム上の業務知識の世代交代を含め、システムのことはプロであるベンダーに」としたとろで、実態はそのようにならず、新たに集められたメンバーが過去の資料と、稼働しているシステムを見比べつつ「こうであろう」と想像・想定しながら世代交代をしているに過ぎない。

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