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» 2008年10月29日 18時38分 UPDATE

CRMの新潮流:「兵糧攻め」でデータ入力促す――成功するCRM導入術 (1/3)

日本のみならず世界でもCRMはERPのようには浸透していない。だが、日本の成功事例は米国よりもさらに少ない。その理由を考えていく。CRMを浸透させるためには営業担当者が、CRMに入力しないと損をするような仕組みづくりが必要である。

[吉田 融正(ブリッジインターナショナル),ITmedia]

 1997年の初頭、日本で「CRM」(顧客関係管理)という言葉はほとんど知られていなかった。一方で、SFA(セールスフォースオートメーション)という言葉が少し先行し、注目され始めていた。SFAという言葉の響きがいかにも米国を模倣した感じがするため、実際ほとんどの日本人が言葉にアレルギー反応を起こしていた。「欧米と日本の営業スタイルは根本的に違う」と直感的に思わせてしまった。方法論としてもツールとしても拒絶反応が起きた。

職人気質の営業現場の反発

 日本の営業担当者はSFAと聞くと直感的に工場のラインを想像し、自動的に商談が出来上がっていくようなとらえ方をしていたようだ。「そんなわけないだろ」「営業現場はそんな甘くない」という現場営業担当者や営業経験者からのお叱りやご指摘を受けた。会計や物流、インフラ面ではインターネットや高速データベースといった便利なシステムが欧米から入ってきて、一定の範囲でその恩恵にあずかっているものの、こと営業系のシステムになると本能的に「反発」する人が多かった。

 1998年ごろになり、ようやくCRMという言葉を日本でも耳にするようになった。これはSFAと同質の反発以外にも違う意味での反発がさらにあった。それはCRMが謳う顧客関係の構築方法についての、見解だった。長年、番頭営業の世界で生きてきた人間は、「顧客関係の構築こそ、営業のスキルであり仕事である!」と考えている。CRMのキーコンセプトである「会社のさまざまな部門全員で顧客関係を構築し、全社員で顧客対応する」という考え方など到底飲みこめない。

たいていの場合、「営業をバカにするな」「顧客関係をつくるのは本当に大変。それこそ営業のスキルだ。営業以外で顧客対応などできるはずがない!」といった類の反発が勃発する。要は、営業現場は職人気質のため、システム化を具体的に検討する前に、本能的に「反発」し拒絶されるのだ。営業がCRMの意味とCRMを使った仕事を嫌うという傾向は、古い課題では決してない。今も厳然として存在するリアルな課題である。

CRMなくても業務は動く

 バックオフィスの業務のシステム化はまったなしで、過去も投資をしており、多くの企業の日常業務はシステムがなければ動かない状況になっている。それに対して営業系のシステムであるCRMとなると、なくても業務は動くから、緊急にはいらないという議論になる。CRMがなくとも、各人の手帳とスケジュール管理システム、営業成績を管理するエクセルさえあれば、ひとまず営業活動は以前と変わりなくできるからだ。

 投資や導入を引率するシステム部門はどうか。基本的にCRMはあまり手をつけたくないソリューションの領域だといえる。まず、最初の理由として、営業部門は口煩く要件定義などが他部門より大変な点が挙げられる。要件に煩いうえに、現場で数字を上げていくミッションに注力したい営業部門から、導入に対して、全面協力を得ることも難しい。

 情報システム部門としては、業務系システムの開発タスクが多く残っているなかで、なくても業務はまわるCRMの存在は、切迫感の薄い領域だといえる。

 唯一違いが出るのがトップの考え方である。トップがCRMの考え方を正確に理解して、トップダウンで現状打破を敢行するかどうかが、CRM導入のまずのポイントとなる。自身の経験からも、CRM導入でボトムアップの意思決定は少ないと言い切れる。

 「現在はCRMシステムがなくとも業務は動くが、競争力のアップや他社との差別化を図るために導入する」という将来を見越した考えをトップが持てるかどうか。そして、予算と営業プロセスにメスを入れるところまで、英断できるかどうか。

 エンドユーザーの営業部門にも歓迎されず、システム部門は厄介もの扱いのシステムが唯一導入されるケースはこの種のトップがいるかいないかが決め手となる。とはいえ、厳しい言い方をすると、実際には、日本企業のトップは欧米企業のトップと比較してこのような意思決定ができず、短期的な視点での取り組みに終始する傾向が高い。

 中にはCRMを導入したら、あっという間に顧客関係が構築され、売上が大幅に伸びると勘違いするトップもいる始末である。CRMも業務プロセスの変革も1カ月後、2カ月後にすぐに効果が出るものではない、半年から1年、サイクルを回して初めて効果が得られる。辛抱がいる取り組みなのだ。

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