NASAのお隣で、HPが考える「もう1つのSaaS」を見た サービスとしてのストレージって?(2/2 ページ)

» 2008年10月30日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
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シンプルという切り口でストレージソリューションを分類

 最初のSは「Simply Storage Consolidation」。HPが提示した回答はストレージ統合ということになる。だが、サーバやストレージのコンソリデーションというと「コストや運用負荷がかかるから、普通のファイルサーバで十分」と考える向きが、中堅中小企業にはあるという。

 この市場に対し、HPはMSA(Modular Smart Array)、そしてAiO(All-in-One Storage System)製品群を提供する。

 AiOはいうなれば、バックアップ機能を有するファイルサーバであり外部ディスク。iSCSI接続によるデータストレージ機能、ファイル共有(NAS)機能、データ保護機能を兼ね備える。またWindows Storage Serverが有するシングルインスタンスストレージ機能を通じ、データの重複保存を防ぐ。通常はバックアップツールの経験が必要となるRAIDやスナップショットの設定も、徹底してウイザードから行えるよう開発された。ユーザーはWindows Serverの管理経験すら不要だという。AiOには無制限のユーザーライセンス(CAL)も付属している。小規模事業者に適した製品と位置付けられる。

 MSAはSANに対応したディスクアレイ製品。HPでは、サービス停止をある程度まで許容できる小〜中規模事業者向けとしている。サービスの停止を許容できない環境においては、EVA(Enterprise Virtual Array)が適当な製品となる。

 一般的なディスクアレイ製品では、ストレージを拡張する際、既存のRAIDセットとは別に新たなRAIDセットを追加する必要がある。ログ領域のパフォーマンスを向上するには、RAIDセットごとに空き容量を確保する必要があり、ムダが生じてしまう。

 対してEVAでは、HP独自の仮想化機能により(計画停止なく)オンラインで物理ディスクを拡張でき、さらに1つのRAIDセットとして再配置できる。ディスクを有効に使えるし、定期的なチューニングも必要ない、ということになる。HPではこの技術を「新世代RAIDテクノロジー」と呼んでいる。

従来のストレージとEVAの違い 従来のストレージとEVAの違い。EVAでは、拡張したディスクの「平準化処理」がオンラインで自動実行される

デデュプリケーションの仕組み デデュプリケーションの仕組み。定期バックアップが重ねられるほど重複部分が多くなるため、導入効果が高くなる

 2つめのSは「Simply Business Protection」と表現された。いわゆるデータの保存と保護、そして復旧である。

 「キーテクノロジーは、データのデデュプリケーション」とシュミット氏は話す。デデュプリケーションとは、保存するデータの重複部分を排除することで総データ量を抑える技術。HPでは、VLS(Virtual Library System)製品群において「加速的重複排除(Accelerated Deduplication)」と呼ばれる、いったんデータをドライブに取り込んだ後、ドライブ内で重複を排除する技術を実装している。

 しかしVLS Gatewayは、その導入規模からいって、必ずしも中堅中小企業に適したものだとはいえない。「中堅中小企業ユーザーに対するスペシフィックなソリューションだ」(シュミット氏)として提供されるのが「動的重複排除(Dynamic Deduplication)」だ。

RDX(外付型) RDX(外付型)

 この技術は、加速的重複排除と異なり、データを転送する過程でリアルタイムに重複排除をかける。製品としてはディスクバックアップストレージのD2D2500 Backup SystemD2D4000 Backup Systemが、動的重複排除を備える。

 重複排除はその性格上、長く使い続けるほど効果が高くなる。同社によると、一般的なケースでは導入から3カ月を経た時点で、バックアップデータを保存するディスク容量を約50分の1にまで削減できるという(毎日フルバックアップした場合)。

MS Exchange 2007のSolution Block例 MS Exchange 2007のSolution Block例

 また「RDX(ハードディスクベースのリムーバブルメディア)」を採用した製品(RDX320 diskbackup system:現段階で日本市場へは未投入)もユーザーへ提供している。RDXという製品分野は、日本市場での立ち上がりという意味では「まだこれから」という状況だ。だがHPは、ドラッグ&ドロップでファイルのバックアップやリストアができ、管理ツールも(Windows Server上などに)常駐し「メンテナンスいらず」であるなど、運用効率という観点から特に小規模企業に適したバックアップソリューションだと位置付ける。

 最後のSは「Simply Business Solutions」。SAPやOracle EBSといったソリューションをStorageWorks、そしてBladeSystemを用いて統合したものであり、HPでは代表的なものいくつかを「Solution Block」としてピックアップ。ここまで述べられた「2つのS」を総合したものと考えられる。もちろんERP製品に限るものではなく、例えばWindows Essential Business Server(中堅中小向けサーバスイート)のSolution Blockも紹介されるなど、ユーザーはその企業規模や用途に応じて導入できそうだ。


リー・ジョーンズ氏 エンタープライズサーバ&ストレージ マーケティングディレクター リー・ジョーンズ氏

 シュミット氏は日本市場について、「(中国、インド、ベトナムなどを押さえ)アジアパシフィック圏において最大の市場だ」と評価する。その要因についてエンタープライズサーバ&ストレージ部門のマーケティングディレクターを務めるリー・ジョーンズ氏は次のように言及する。「ユーザーが求めるのはシンプルなソリューション。そして日本市場においてHP ProLiantサーバは高い販売実績を挙げている。おそらくユーザー内において、富士通、NEC、日立製品などとの異機種混在環境で使うより、StorageWorksとProLiantを組み合わせて導入することを選ぶという意識、つまり相乗効果が働いているのではないか。その背景には、日本語ローカライズを多言語に先駆けて行うなど、HPの日本重視戦略も効いているだろう」

 現在、IT市場ではSaaS(サービスとしてのソフトウェア)が脚光を浴びている。そしてSaaSを支える環境として、クラウドというキーワードが注目を集めている。このトレンドになぞらえてか、シュミット氏は次のように話す。「StorageWorks製品群が提供するのは、サービスとしてのストレージ、すなわちSaaS(Storage as a Service)なのだ」

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