オークションとバンキングが標的――統計から見るサイバー犯罪の最新動向ハギーが解説 目からウロコの情報セキュリティ事情(2/2 ページ)

» 2008年11月01日 09時30分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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怪しげな情報はいかほどに

 警察庁以外にもさまざまなサイバー犯罪に関する資料が公開されています。その中でもインターネット協会が運営する「インターネット・ホットラインセンター」の資料は、専門家が活用する場合が少ないものの、面白い情報を読み解くことができるでしょう。

 例えば2007年には、わいせつ物や薬物といった法律に抵触する違法情報が5592件、わいせつ物や薬物、銃器、犯罪および自殺の勧誘といった有害情報が1639件寄せられ、資料ではインターネットサービスプロバイダーなどに削除依頼を行い、実際に削除された件数などが紹介されています。

プロバイダに削除依頼した違法情報の状況(インターネット協会資料から)
プロバイダに削除依頼した有害情報の状況(インターネット協会資料から)

 この件数をご覧になって多いと見るか、少ないと見るかを企業の研修や学校の授業の場などで討論されてはいかがでしょうか。

 余談ですが、警察庁が今相当に頭を悩ませているのが犯罪に使われた携帯電話からどのようにして証拠となる通話履歴や電話帳データを取り出すかということです。携帯電話は、通信事業者やメーカー、機種によってOSやファイル形式などが異なるので、証拠となるデータを取り出すには高度な知識が必要になります。

 調査、分析する台数は1年間で2万台以上にもなるので、専門家であるわたしの目からみても信じられない程大変なものでしょう。もう少し「犯罪捜査にやさしい携帯電話」というような観点で携帯電話が開発されてもいいのではないでしょうか。


 これら直近の数字の推移から懸念すべき事象をまとめると、サイバー犯罪全体の増加率は、2005年ごろから大きな伸びとなっています(2007年は前年に比べ23.7%と高い伸び率になった)。

 特に詐欺犯罪自体は微減となりましたが、インターネットオークション詐欺は被害認知件数でほかを圧倒しており、今後とも注意が必要です。また、ネットバンキング関連の不正アクセスも件数こそ少ないものの、伸び率は1年で3倍となりました。被害金額も大きく、警察庁資料では言及していませんが、「振り込め詐欺」を含めた被害件数や金額は相当な規模になるとみられます。

萩原栄幸

株式会社ピーシーキッド上席研究員、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、日本セキュリティ・マネジメント学会理事、ネット情報セキュリティ研究会技術調査部長、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、情報セキュリティに悩む個人や企業からの相談を受ける「情報セキュリティ110番」を運営。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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