レディーファーストは白? それとも黒?――運用のグレーゾーンって難しい悲しき女子ヘルプデスク物語(2/3 ページ)

» 2008年11月13日 08時30分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]

運用の徹底はハイテク頼りじゃダメ

 「さて、帰るかー」

 ちょっとしたトラブル対応で、いつもより帰りが少し遅くなってしまった。時計を見たら18時40分を過ぎたところ。表玄関は閉まっているハズ。まっすぐ裏口へと向かうわたし。裏口のドアノブを回し外に出ると、2、3人の社員がタバコ休憩をしていた。ビルは全館禁煙なので、こうしてビルの外に出ないと、タバコが吸えないのだ。

わたし お先に失礼しまーす。

 タバコ休憩をしている社員の人に挨拶したら「お疲れ様でしたー」と返事が返ってきた。わたしのような仕事をしていると、自然と多くの社員と顔見知りになる。もし悪いことでもして、新聞やテレビに顔が載ってしまったら、すぐにわたしだと分かっちゃう。

 そこへ、鮮やかなピンク色のスーツを着た女性がやってきた。誰だろう? 雰囲気からして、社員ではないと思うのだけど……。少なくとも、わたしは彼女の顔に見覚えがない。

女性 こんばんはー。

 わたしや、タバコ休憩している人たちに笑顔で挨拶をしながら、彼女は裏口にあるインターホンに手を伸ばした。すると休憩をしていた社員の1人が、当たり前のように、そしてとんでもない行動に出たのだ。

 その社員は「いま開けますねー」と、自分の社員証でビルの入り口を開けたのだ。一方女性も当たり前のように「ありがとうございます」と挨拶して社内に入っていくではないか……!

わたし 今のヒトは?

 思わず聞いてしまうわたし。(裏口を開けた)社員は、きょとんとして答える。

社員 今日は社内セミナーの日ですよね? たぶん講師の方ですよ。見覚えもあるような……。

 たぶん? 見覚えがある? それだけで中に入れちゃうの?

 それって、新手の顔認証ですか?(そんなばかな)

 もし講師じゃなかったらどうするの? 彼女がだれなのか確認もせずにカンタンに入れちゃっていいのかな? ドアを開けてあげた社員にしてみれば、親切のつもりだったかもしれない。カレの気持ちも分からないわけじゃないけれど、これでは正体不明の人が社内に入れないようにするためのセキュリティシステムが意味をなさない。もちろん社内規定にも違反している。しかも、それが原因で情報が漏えいしたりしたら、親切で開けてあげた社員はどう扱われるのだろう?

 心配になったわたしは、念のために担当の課に電話をかけて確認をしてもらった。やはり、講師の先生だったようで一安心。しかし、もし彼女が講師ではなかったら? あるいは、彼女が今日の担当ではなかったら? そりゃまあ、大胆不敵にもよからぬことを考えた人が正面から会社の中に入ってくるなんて、めったにないかもしれないけどね……。

 それともわたしが正論を振りかざしているだけなのかな? でも、せっかくのハイテクなシステムも、使っている側のローテクな部分で意味をなさなくなるなんて、皮肉なものですね。

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