金融危機とIT経営伴大作の木漏れ日(2/4 ページ)

» 2008年11月14日 08時00分 公開
[伴大作(ICTジャーナリスト),ITmedia]

ラッキー、アンラッキー

 一般に、業績が好調な会社は情報システムへ部門への投資は活発で、不振の会社は投資に慎重だという考えがある。

 それはおおむね正しいが、一部に例外もある。その例外的なケースは業績が悪いから投資を諦めるのではなく、現状のシステムを徹底的に見直し、システムの運用コストを削減するよう最大限努力し、新規投資の資金を捻出する努力を重ねるのだ。

 大概の会社は予算が圧縮されると新規開発が必要だと思っても、資金がないので延期あるいは中止する。しかし、システムを見直し、運用コストを切り詰めるのは非常な努力を要するのでこの違いは大きい。

 もちろん、圧縮した予算を新規投資に回してもいいという経営サイドのコミットをもらえないとこの前提は最初から崩れる。また、経営側は情報システム部の内情にお構いなく、世間の風潮には敏感である事が多い。エンドユーザーもこれはほぼ同様だ。

 昔の話だが、大手企業でホワイトカラーの社員全員にPCを配備するのが流行した。これにLANとファイルサーバが加わっていわゆる「OAシステム」となる。もし、ライバル企業がOAシステムを導入したら、自社も負けずに経営者が導入したいと考えるのは自然だ。

 ただし、導入するシステムの中身は経営サイドとエンドユーザーでは大筋で一致するものの、中身は大きく異なっているケースが多かった。経営サイドはできるだけ安価で大量、均質なマシンを導入することにより、コスト低減を図りたいと思った。これに対し、エンドユーザーは、利用する部署により使い方がさまざまで要求する仕様、性能は当然異なる。

 このすれ違いを調整するのは、事前にほとんど何の関与していない情報システム部門に任される場合が多かった。もとより情報システム部門は基幹系システムのお守りで、スタッフの人員、予算も手一杯でとてもそちらの人や金を割く余裕がない場合が多発した。

 こうした事態は日本の大手企業で多発した。しかし前述のように予算を切り詰め、開発投資を怠っていなかったユーザーは早くからPCやLANの導入に関し調査研究を行ってきたため、極めてスムースに対応した。予算が潤沢な会社ほど逆に慌てたケースが見られた。

 いわゆるOAシステムは、IT部門の先進性を占うリトマス試験紙となり、その後、企業情報ステム部門を常に悩ませる鬼子的な存在となっていった。先進的な情報システム部門を抱えるユーザー企業を別として、業績の芳しくない企業の情報システム部門に在籍するスタッフにとって、「とことん運が悪い」と思うのは不思議ではない。

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