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» 2008年11月14日 08時00分 UPDATE

Gartner Column:価値理念を1つだけ選ぶ――それがIT戦略策定のポイント (1/2)

ナンバーワン企業の価値理念はたった1つ。前回ソニーの例を出して紹介した。今回は世界と日本のCIOにとっての価値理念の違いなどに触れながら、IT戦略の効果的な策定方法について述べる。

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

 前回のコラムは、編集部から伺ったところ、読者から大変好評だったとのこと。幾つかご意見やご質問をいただきました。それに回答する形で今回も始めましょう。

 「どうして、たった1つしか選択しないのですか?」「当社の経営トップは、3つのすべてが大事だと言っていますし、わたし自身も存在価値を1つに絞り込むのは危険だと思います」などの意見が多く寄せられました。前回は事例としてソニーの価値理念と企業活動をご紹介しました。ソニーは商品の優位性を価値理念においていますが、顧客との親密性やビジネス運営の卓越性など他の価値理念も決して疎かにしていません。

 それでも選ぶ理念はたった1つです。なぜでしょうか。

 前回のコラムをもう一度読んでみてください。マイケル・トレーシーらは、どんな企業を調査したでしょうか? 「業界ナンバーワンの企業を調査した」と書いてありますね。そうです、各業界でナンバーワンの企業だけの調査結果なのです。「たった1つ」の価値理念を持ち、従業員だけでなく、株主やお客さまとも共有できているのです。そこが、ナンバーワンではない企業と決定的に異なっているのです。1つに集中できないという経営者は少なくありません。しかし、それは業界でナンバーワンになっていない企業の経営者に多いと考えられます。「そこそこ」ではあっても、決して、飛び抜けた業績をあげている企業ではないはずです。

 このコラムを始めて以来ずっと、経営者は「自社の成長を望んで止まない」と書いてきました。成長とは、単に売り上げや利益を拡大するのではなく、他社のシェアを奪って当社のシェアを伸ばすことが成長であると言い続けています。「全部が大事」という経営者は、本当に成長を望んでいるのか疑わしいと言わざるを得ません。

 もし、読者の皆さんが経営者や経営者の側近の方ならば、どれが一番大切で、それを当社の価値理念に置くのかをいま一度考えてみてはいかがでしょうか。業界で突出してナンバーワンになるためには、突出した価値理念を従業員、顧客、株主らと共有できなければならないのです。

gartner1.jpg 図1

 参考までに、当社が実施しているCIOアンケート調査によると、グローバルのCIOと 日本のCIOとの間にこの価値理念について、図1のような結果が出ました。

 日本のCIOは、「顧客との親密度」を自社の価値理念にあげている比率が高いことに気付くでしょう。日本の経営者やCIOは、「顧客との親密性」という軸で、顧客に自社を選択してもらいたいと考えているということです。

 一方で、「ビジネス運営の卓越性」はグローバルに比べて低い比率となっています。品質の高い製品やサービスを低価格で提供するという、一昔前の日本企業のお家芸とも言えるビジネスの方向性は、失われつつあるということでしょうか。もっとも、このアンケート調査に正解とか不正解とか、良いとか悪いとかいうものはありませんから、3つのうちのどれを回答していただいても問題はありません。

 さて、ガートナーエグゼクティブプログラムでは、CIO向けのアドバイザリーリサーチを提供するのが主業務の1つですから、顧客から自社のIT戦略を立案するにあたりご質問を頂戴することがよくあります。

 Gartnerとしては、一義的に「貴社の事業(ビジネス)戦略に合せたIT戦略を立案されることをお勧めします」とご回答します。ただし、これがすべてではありません。可能な限りお悩みをお伺いし、個別にアドバイスをします。

 しかし、上述のように「貴社の事業(ビジネス)戦略を……」というと、確実に2パターンの応酬が待っています。

  • 1 「当社には確固たる事業戦略は存在しません」(事業戦略も立案中ですを含む)
  • 2 「当社の事業戦略は3年間で売上を2倍にすることです」

 会社として事業戦略が本当にないのかどうかは定かではありません。2の「当社の事業戦略は3年間で売上を2倍にすることです」は戦略目標と戦略そのものとを勘違いしている企業のケースです。3年間で売上を2倍にというのは数字の違いはあれどもよく聞くフレーズです。わたしは、このフレーズだけを取り上げて「それは、戦略目標ではなくスローガンですね」と言い切ります。スローガンは、ないよりもあった方がいい場合がありますが、それだけで会社は事業を成長させることは難しいでしょう。

 さて、話を本題に戻しますと、CIOは、企業(ビジネス部門単位の場合もあり)の最高情報責任者です。組織の中では上級エグゼクティブの一人です。では、明確な事業(ビジネス)戦略を得られなかった場合に、一人の上級エグゼクティブとして、CIOには次の質問に答えていただきたいと申し上げます。難しく考えずに考えてみてください。

gartner2.jpg 図2
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