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» 2008年11月18日 08時00分 UPDATE

Dreamforce 2008 Report:クラウドはナレッジマネジメントをも進化に導く

蓄積された情報の共有にフォーカスしていた「ナレッジマネジメント」という手法が変わろうとしている。情報に加え「ヒトとヒト」のつながりがコンテンツ管理にも求められているからだ。そしてこの分野でも、クラウド型サービスがキーとなっている。

[谷川耕一,ITmedia]

コンテンツ管理において情報がオンデマンド上にないデメリット

 従来、Salesforce.comで取り扱えるデータは、構造化されたデータであった。つまりオンデマンド上のデータベースに格納されたものが中心だった。これに対し2007年4月、新たな機能としてSalesforce Contentの提供が発表され、非構造化情報についてもオンデマンドで管理できるよう機能が強化された。Salesforce Contentのコンペティターは、EMCの「Documentum」やMicrosoftの「SharePoint」などのコンテンツ、ドキュメント管理ツールということになる。

Salesforce.comのシニアディレクター、ティム・ベーカー氏 Salesforce.comのシニアディレクター、ティム・ベーカー氏

 多くの非構造化データは、企業の管理するローカルに設置されたファイルサーバなどに格納されているはずだ。Salesforce Contentの機能を活用するには、管理したい情報をローカルのサーバからオンデマンド上に移動させる必要がある。この「情報を移動させる」という作業負荷は、Salesforce Contentの利用をためらわせる原因になるのではと予測できる。これに対し、Content製品担当のシニアディレクターのティム・ベーカー氏は「一気にすべての情報を、クラウドに持って行く必要はない。企業内のシステムとクラウドのインテグレーションという方法がある」と話す。むしろ、Salesforce.comのContentの機能を利用し、社内のバラバラな情報の管理を、オンデマンドで統合するという顧客の動きもあるということだ。

 「仮にデータをすべて統合できなくても、インタフェースのところでうまく融合するという方法もある」(ベーカー氏)

 この「インタフェースの融合」は、Salesforce.comが最も得意とする部分でもある。早い段階からWeb 2.0への対応を行い、さまざまな機能をマッシュアップでSalesforce.comの画面に融合できる。コンテンツ管理についても、こういった方法で社内の情報もオンデマンドにある情報もユーザーからはシームレスに扱えるということだ。

 また、多くのコンテンツ管理のソリューションでは、Microsoft Office製品のドキュメントが対象となっている。これに加えSalesforce.comでは、Google Appsのドキュメントが利用できる。Microsoft Office製品と異なり、Google Appsであればオンデマンド上で最初から、幅広いユーザー間でドキュメント情報を共有でき、ドキュメント共有のために複雑な仕組みを新たに導入する必要もない。このことをユーザーが認知するだけでも、コンテンツ管理のオンデマンドへの移行は推進されるはずだとベーカー氏は話す。

「キーワード検索、共有」から「意味検索やリコメンド、自動ワークフロー」へ

 とはいえ、昨今のコンテンツ管理やナレッジマネジメントのソリューションは、キーワード検索の機能を強化し、必要な情報を迅速かつ効率的に探し出し、セキュアに共有するだけではない。意味検索(Semantic Search)などを駆使し関連性ある情報を自動的にユーザーに提供するリコメンド機能まで、実装しつつある。

 こういった意味検索やリコメンドの機能までも実現しようとすれば、すべてのコンテンツがオンデマンド上にないと不利になるのではとベーカー氏に聞くと「コンテンツそのものをすべてオンデマンドに置く必要はない。例えば、コンテンツのメタデータだけをオンデマンドに取り込んで、コンテンツを管理することも可能だ」と話す。

 すべてのコンテンツをオンデマンドに持ってくることで生じる課題は、作業負荷はもちろん、コストの問題も大きい。すべてをSalesforce.comの中に置けば確かに便利にはなるのだが、新たにコンテンツを格納する領域を借り増さなければならず、より多くの費用が発生することになる。そこで、アクセス頻度の低い情報、サイズの大きな画像や映像などすべてをSalesforce.comに持ってくるのではなく、今回のDreamforce 2008で提携を発表したAmazon.comのAmazon Simple Storage Serviceのような、安価なクラウドのストレージサービスを組み合わせて活用することで、コスト問題を解決できるかもしれない。

 さらに、コンテンツ管理、ナレッジマネジメントの新たな方向性として、検索により必要なコンテンツを見つけることをトリガーに、その情報に関連するワークフローを自動的に起動するといった機能も最近では求められている。この仕組みを実現するには、コンテンツマネジメントツール導入だけでは難しいことが多く、加えてカスタマイズ開発も大きく発生してしまう。

 こういったナレッジマネジメントに求められる新たな機能のSalesforce.comでの対応について聞くと「確かにワークフローの自動起動機能を実現するのは簡単ではない。しかし、いずれforce.comで可能になる。まさにこういった機能を実装すべく、現在、製品開発を進めている」とのことだ。検索した結果を参照しただけで、それがトリガーとなり自動でワークフローが起動する。これを実現するのは、ローカル環境であっても苦労は変わらないとベーカー氏は指摘する。同社のforce.comには、すでにワークフロー機能がそろっているので、ほかのSalesforce.comサービスと同様、なるべくコードを書かずに、ほんの数週間程度でユーザーが機能を実現できるようにするという。

情報の共有から人と人との関係の強化へ

 また従来、コンテンツ管理やナレッジマネジメントの分野では、蓄積されている情報にフォーカスが当てられ、その情報の中身をいかに把握し、どう活用するかに注力してきた。ところが最近は、知識となる情報を生み出した「人」、そしてその情報を参照した「人」が着目され始めている。その人が持っている知識やユーザー個人の興味を把握し、その情報に基づいて自分の興味を持つ分野の専門家を見つけ出す。見つけ出したらその専門家のこれまでに提供してきた情報を参照でき、その専門家と同じ分野の別の専門家を見つけ出し、それらの人と容易にコミュニケーションが取れるような機能も提供する。こういった「人と人の関係を強化する」という新たな方向性が、コンテンツ管理やナレッジマネジメントには求められている。

 上記を実現するには、従来のコンテンツ管理の機能とソーシャルネットワーク(SNS)の機能を組み合わせて活用する方法が有効だ。SNSには、そこに登録し活用している人に関する情報が豊富にあるからだ。まさに、今回のDreamforce 2008での重要なパートナー連携の1つとなっているのが、このSNSで大きく成功を遂げているFacebookとのものだった。

 そして、人と人の関係性を強化するには、システムが処理ごとに分散せず集中的に管理されるSalesforce.comのようなオンデマンド型サービスが有利な部分がある。あらゆるユーザーの行動のフットプリント(足跡)を一元的に取得できるためだ。ベーカー氏によると、人と人との関係を強化する機能の実現のために、Salesforce Contentの機能を設計する際には、ユーザーのフットプリントをコンテンツ管理に反映させることを目指したという。

 Salesforce.comでは、すべてのCRMアプリケーション製品に対する研究開発(R&D)投資を40%増やしているとのこと。Salesforce Contentについても、引き続き重要視されている分野の1つだとベーカー氏は述べた。

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