第3回:拡大するデータウェアハウスの役割CRMチャネルの威力を活性化せよ

CRMチャネルの威力をブースト(増幅、活性化)するための取り組みは、企業が売り上げの拡大を図る上で極めて重要なテーマである。これまでこの連載では、前回と前々回で、キャンペーン管理ツールとデータマイニングツールを利用した、知識の析出からキャンペーンのセットアップ、そしてチャネルへの連携に至るプロセスをさかのぼってきた。第3回では、これを下支えするデータウェアハウスの役割を解説する。

» 2008年11月19日 10時00分 公開
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 データウェアハウスは伝統的に、長期の履歴データを保持し、ビジネスインテリジェンスツールに代表されるレポーティングや非定型分析を行うシステムとして位置づけられてきた。利用者が問い合わせを行えば、答えを返してくれるが、問い合わせがなければ奥座敷に鎮座するだけの、「静的」なシステムとしてイメージされる方も多いのではないだろうか。今回は、「動的」なシステムへと進化し、意思決定の自動化を支えるデータウェアハウスについて概説してみたい。

伝統的なデータウェアハウスからの進化

 下の図はテラデータが示す、データウェアハウス進化の過程を記述したチャートである。それぞれのステージはデータの活用形態を意味し、ステージが進むにしたがい、データの活用も進化していることが分かる。

 伝統的なデータウェアハウスの活用は、この中でステージ1、ステージ2に位置づけられ、ステージ3になると、データマイニングに代表される分析手法が取り入れられる。さらにCRMに限定した場合、ステージ4、ステージ5では、キャンペーン管理ツールが活用される段階になる。そして、ステージが進むにつれて、より鮮度の高いデータが必要とされ、タイプの異なるワークロードが混在するようになってくる。これはデータウェアハウスが「動的」なシステムとして進化する過程でもある。テラデータでは、このようなステージ1からステージ5までを支援するデータウェアハウスのコンセプトを「ADW」(Active Data Warehouse)と呼んでいる。

データウェアハウスの進化 データウェアハウスの進化

データ範囲の拡大

 通常、レポーティングや非定型分析を利用するにあたって重要となるポイントは、より広範で、長期にわたり、詳細なレベルのデータを活用できることだ。鮮度の高いデータは「あれば望ましい」が、「必須」ではない。データを照会する限りにおいては、1分前のデータも、1秒前のデータも、結局のところ「過去」のデータであることには変わりなく、鮮度の高いデータが得られたところで結果は変えられない。

 しかし、ステージ3に移行し、将来の「予測」データが得られ、それに基づいて日常業務が自動化されるとなると、話は違ってくる。鮮度の高いデータが「必須」になるのだ。

 通信事業者が携帯端末の買い換えをうながす案内をするとしよう。たった今、ある顧客が支店に立ち寄って携帯端末を買い換えたとするならば、その顧客を案内対象から除外することが必要になる。また、予測データが正確であるならば、その顧客の買い換え案内に対する反応確率は高いはずであり、この案内の対象として含まれる可能性は高い。であれば、たった今、買い換えた顧客のデータをキャンペーンは考慮すべきだろう。業務に活用するときには、少なくとも顧客が数分前に取った行動と同期を取ることが求められるのだ。

 テラデータではこのような要件に対応するため、「T-Pump」と呼ばれるデータロード・ユーティリティを提供している。すべてのデータをリアルタイムで更新していく必要はないが、リアルタイムに活用したいデータがあった場合、T-Pumpを利用して継続的にデータベースにロードしていくことが可能となる。これによって企業は、より広範で、長期にわたり、詳細なレベルのデータだけでなく、より鮮度の高いデータも駆使して分析を行い、キャンペーン業務を実行できるようになるのである。

異なるワークロードへの対応

 データ活用の幅が広がってくると、その基盤であるデータベースはさまざまなワークロードに応えなければならない。

 テラデータでは、ステージ1からステージ5、さらには継続的なデータロードも含め、そこで必要とされる混合ワークロードに対してコンピュータ資源を割り当てる機能として、「TASM」(Teradata Active Systems Management)を提供している。この機能は、異なるワークロードに対してコンピュータ資源の割当や優先順位を設定して、重要な処理に対するパフォーマンスを確保することを目的としている。資源割当は動的になされるため、例えば、各チャネルに対して案内オファーをフィードするような処理には十分な資源を割り当て、優先すべきワークロードの閑散期には別のワークロード(例えば、データマイニングのモデリング処理など)により多くの資源を割り当てることも可能だ。

 Teradataシステムは開発当初から、並列にコンピュータを追加接続することによって、高い拡張性と、それに伴うパフォーマンスを確保することができるアーキテクチャーを採用してきた。大雑把に言えば、コンピュータノードを4倍にすれば、4倍のパフォーマンスを得られるデータベースシステムであり、この拡張性とパフォーマンスが大規模なデータウェアハウスを構築・活用するユーザーに支持されてきた。

 こうしたユニークな特徴にTASMの機能が加わり、下の図のような異なるワークロードが混合する環境下でも適切に資源配分できるようになる。これは言い換えれば、「動的」へと進化する「ADW」というコンセプトを現実化する技術であり、ADWコンセプト実現のために、同社が継続的に投資を行ってきた成果ともいえる。

異なるワークロード 異なるワークロード

可用性への対応

 このような異なるワークロードを一手に引き受けるとなると、データウェアハウスにはこれまで以上に高い可用性が求められる。また、各チャネルからの問い合わせに対応したり、チャネルの向こう側にいる顧客に対してオファーを届けたりする場合、求められる可用性はミッションクリティカルなレベルとなる。

 日々の業務を支えるTeradata システムは、各ハードウェアコンポーネントを二重化するとともに、フェールオーバーやRAID構成のような耐障害性に強いアーキテクチャーを採用しているが、これに加えてシステムそのものを二重にして稼動させる「Dual Active Solution」も利用できる。

 Dual Active Solutionを利用する場合、ETL(Extract/Transform/Load)の処理なども正副両方のシステムに対して実施され、両システムは同一のテーブルを有することになる。通常運行時は、利用者からの問い合わせは経路指定され、いずれかのシステムに問い合わせが行われる。したがって、バックアックアップシステムのコンピュータ資源も活用され、投資も保護できる。もちろん、片方のシステムに障害が起こった場合にはフェールオーバーし、もう片方のシステムが問い合わせを引き受け、本来の二重化されたシステムの可用性を発揮してくれる。

マーケターの仕事はどう変わるか?

 この連載ではここまで、意思決定の自動化を推進するためのキャンペーン管理ツール、データマイニングツール、そして基盤となるデータウェアハウスの進化について解説してきた。最後に、これによってマーケターの仕事の仕方がどう変わっていくかを示唆し、連載のまとめとしたい。

 強力なデータウェアハウスを基盤として、データマイニングも含めた分析、そしてキャンペーンの事前セットアップを行うことによって、キャンペーンを実行する際の煩雑な作業からは解放される。本来必要な探索的データ分析、キャンペーンアイデアの立案といった創造的作業にマーケターはより多くの時間を割くことができるようになる。セットアップさえすればキャンペーン実行をコンピュータが代行してくれるため、一定期間におけるキャンペーンの実行可能量も増大する。

 そして何よりも広範で、詳細で、長期にわたりつつ、鮮度の高いデータを、分析とキャンペーンに活用できるようになる。これが意思決定の能力を大幅に高めることは既に触れたとおりだ。そして、これらの集積は、各チャネルの威力をブースト(増幅、活性化)してくれるはずだ。

 「誰に対して、何を案内すべきか?」── このシンプル、かつ究極の問いに答えてくれるエージェントとして、データウェアハウスは今までよりも大きな役割を担うことになる。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年12月18日