MS、きめ細かな価格設定でGoogle Appsの低価格に対抗月額か、年額か(1/2 ページ)

Microsoftは、Googleが企業向けメッセージング/コラボレーションアプリケーションのGAPEで採用している包括的な料金設定よりも、Microsoft Online Servicesのきめ細かな価格設定の方が優れていると考えている。価格的にはGAPEの方が安いが、ユーザーが必要な機能だけを選べるというのがMicrosoftの訴求点だ。

» 2008年11月21日 07時15分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Googleが2007年2月に「GAPE(Google Apps Premier Edition)」をリリースしたとき、ソフトウェアの専門家たちは、数種類のコラボレーションアプリケーションに対してシンプルで包括的な価格設定が採用されたことを高く評価した。

 当時、この方式はMicrosoftのオンプレミス(自社運用)型アプリケーションが採用していた、「CAL(Client Access License)」と「SA(Software Assurance)」を組み込んだモデルから大きく進化したものだと思われた。専門家たちは口をそろえて、「GoogleはMicrosoftのプロダクティビティ/コラボレーションソフトウェア帝国への挑戦者だ」と宣言した。

 それから18カ月後、競争相手を出し抜くのが得意なMicrosoftは、GoogleがGAPEで採用している包括的な価格設定は、ユーザーが満足できるものではないと主張している。ユーザーが本当に求めているのは、価格面での幅広い選択肢だという。

 これは、Microsoftのインフォメーションワーカー部門のクリス・カポセラ上級副社長が11月17日のeWEEKの取材で、Google Appsに対する「Microsoft Exchange Online」と「SharePoint Online」の差別化ポイントの1つとして挙げた価値基準である。

 Microsoftは11月17日、人気の高いGoogle Appsスイートに対抗する製品としてExchange OnlineとSharePoint Onlineを正式に発表した。Microsoftの新スイートの価格は、ユーザーが業務を遂行するのに必要な機能に応じて、1ユーザー当たり月額2〜15ドルに設定している。カポセラ氏は次のように語っている。

 「価格設定は、顧客がMicrosoft製品を検討する大きな理由になる。GoogleなどのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)プロバイダーが採用している万能サイズ的なアプローチをユーザーが求めているとは思わない。われわれは、さまざまな機能をさまざまな価格で提供するつもりだ。非常にさまざまなタイプのインフォメーションワーカー(情報を活用するビジネスマン)がいるからだ。人々の仕事のやり方はさまざまであることを、われわれはほかの誰よりもよく知っている。われわれは彼らに選択肢を提供したいのだ」

 これがMicrosoftの基本方針だ。カポセラ氏によると、具体的には、ExchangeからのOutlook電子メールにアクセスするだけの「デスクレス」ワーカーであれば月額2ドル支払うだけでよく、Exchange OnlineとSharePoint Onlineの機能に加え、WebカンファレンスアプリケーションのOffice LiveMeetingを利用する必要があるワーカーの場合は月額15ドルとなる。

 カポセラ氏は、企業の情報責任者にとっては、Googleの製品よりもMicrosoftのSaaS型プロダクティビティ/コラボレーションアプリケーションの方が魅力的だと主張する。Microsoftが提供するソリューションでは、必要な機能だけを選んで利用できるからだ。

 Enterprise Applications Consultingのジョッシュ・グリーンバウム氏は、この差別化は賢明な戦略だと話す。なぜなら「Googleは市場でMicrosoftを一歩リードしており、MicrosoftはGoogleが提供している製品と比べた相対的な価値に関するメッセージを明確にする必要があるからだ」。さらにグリーンバウム氏によると、Microsoftのきめ細かな価格設定は、SaaSモデルの発展を促進するという。

 だがMicrosoftのSaaSソリューションは、Google Appsのコストを軽く上回る。Microsoftの価格モデルは1ユーザー当たりの月額方式であり、年額方式ではない。電子メール用にExchange Onlineだけを契約している企業であれば、月額10ドル、年額にすると120ドル支払うことになる。これは、GAPEの全機能を利用するのに掛かる費用(1ユーザーに付き年額50ドル)の2倍以上である。

 Exchange Onlineだけを選べるというのがMicrosoftの訴求点だ。つまり、GAPEのユーザーには必要であろうとなかろうと、GoogleのGmail、Calendar、Docs、Sites、Videoなどの機能が提供される、というのが同社の主張だ。GAPEでは、ユーザーが必要なアプリケーションだけを選ぶことができないというのだ。割高なSaaS製品を提供するMicrosoftの価値提案はこの部分にある。

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