確信犯によるオークション詐欺は犯罪ですが、現実の取引では「詐欺だ」と思われたものの実際にはそうではなかったというケースも数多くあります。例えば、「うっかり別の品物を送付した」「送ったが郵送の途中で壊れてしまった」「別人(あて名が似ていたために)に送った」「(劣化によって)期待した性能や機能が出なかった(劣化による)」……というものです。
実際に購入したPCが故障して出品者に連絡を取ろうとしても、まったく連絡が取れなくなったケースがあります。出品者は、「このくらいなら、急がなくてもよいか」と1週間ほど対応しなかったそうですが、購入者は焦ってしまいました。「待つ身は辛い」ということで、出品者も相手の立場を想定して対応することも大切です。
当然ながら、こういう理由なら詐欺犯罪ではなく、善意の結果ということになります。通常、出品者と購入者が互いに連絡を取り合うことで無事解決する場合がほとんどです。
ただし、「破損した場合」「品質劣化」の場合では事実をめぐって揉めるケースが少なからずあり、お互いが初対面なのでそれぞれに「相手は詐欺犯罪者ではないか? 」と疑ってしまうのです。
取引の際に出品者と購入者が注意すべきことは以下の通りです。
出品者
入札者
(※エスクローサービスの解説はこちら。@IT「Insider's Computer Dictionary」より)
なお、中古品の場合は経年劣化に対して購入者が「こんなに古いなんで詐欺じゃないか」と疑っても、第三者の目には「自然な劣化だよ」ということもあります。品質にこだわる方はネットオークションで中古品を購入するのを避けるべきでしょう。また、出品者と購入者が近い場合なら待ち合わせ場所を決めて実際に相対で品物と現金を交換する方法も良いでしょう。
詐欺を疑われるような場合でも、これらの対応が適切であれば相手は「善意の人」である可能性が高く、多少のトラブルでも解決に協力してもらえる期待が持てるでしょう(100%確実ではないのですが)。
つまり、このような対応を嫌うような出品者は、必ずしも詐欺とは限りませんが注意が必要です。状況をしっかりと見極め、「疑わしきは取引しない」という原則を一貫するべきでしょう。特に「早く現金化をしたがっている」「連絡先の住所が不明瞭」「電話連絡しても不通」「どう考慮しても相場からみて逸脱した価格である(特に安価な場合)」「電子メールアドレスはフリーメールサービス」といった場合には関与しない方が懸命です。
株式会社ピーシーキッド上席研究員、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、日本セキュリティ・マネジメント学会理事、ネット情報セキュリティ研究会技術調査部長、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、情報セキュリティに悩む個人や企業からの相談を受ける「情報セキュリティ110番」を運営。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。
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