「かわいくないプレゼン」をしていませんか?IT Oasis(2/2 ページ)

» 2008年11月27日 11時31分 公開
[齋藤順一,ITmedia]
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IT導入でベンダーを選ぶ基準

 IT導入において、発注元がRFPを複数のベンダーに発行し、提案内容やプレゼンによって評価点で採用するベンダーを決めるという方法が増えてきた。プロポーザル方式である。

 自治体などは採点基準がキッチリ作られており、評価者の採点合計で上位のベンダーが採用になる。税金で事業を行うのであるから説明責任があり、点数上位の会社を採用するというのはまことに説明しやすいからである。評価項目、重みづけ、評価方式など評価に当たって方法や考えどころはさまざまある。

 恣意的に評価基準を作れば、定量的な評価法だけでも特定の業者に落とすことができる。逆に評価基準をしっかり定めておかないと「女優が選ぶ芦毛の馬」のパターンになってしまう心配が出てくる。

 民間企業ではどうかというと、定量的な評価方式だけを採用しているところは多くはないと思う。定量的に評価しているように見えても、最後の決断は経営者が定性的な評価で決定するというケースが多いのではないだろうか。

 なぜ定性的に決めるのかといえば、意思決定というものは価値観の披歴であり、それは定性的なものであるからだ。評価値を合計して定量的に決まるのなら、そこに意思決定が入る余地はない。公共発注は無用な意思決定を排除するために定量評価を導入し、透明性を担保しているのである。民間企業の投資はリターンとリスクを評価した上の決断である。そうした意思決定であるのですべてを定量的に、ということにはならない。

 上司が部下に「数値で示せ」と文句を言うのは、意思決定するのは自分であって、部下であるキミが意思決定しないで、事実を提示せよと言っているわけである。

 実際のところ提案回答の内容など専門的すぎて経営者には理解しづらい事もあるし、ITの成果は形のないものであり書くだけならどうとでも書けるので、提案書の内容から出来上がりのサービスイメージを類推するというのは専門家でも簡単ではないだろう。

 経営者が、「あのベンダーの提案質問に対する受け答えは堂々としていて信頼できた」とか、「声が大きくて自信たっぷりであった」といったことを評価してベンダーを最終決定する場合もある。このあたりは、前述の「かわいい戦略による意思決定」に似てなくもない。定量的な評価ももちろんしていくわけだが、甲乙つけがたい場合は「かわいい」かどうかも基準になってくることが多い。意識していようが、していまいが、最終的な判断にそうした尺度が入ってくることはよくあることだ。

 従ってベンダーにとってプレゼンテーションは重要である。

 プレゼンよりも中身、内容が大事だ、あるいは中身がよければプレゼンは多少トチってもなんとかなると考えている人もいるかもしれないが、それは大間違いである。

 よい内容の提案であるのなら、その提案をもっともうまく顧客に伝えることできる人物を社内から選ばなくてはならない。

 競争はそこから始まっているのである。100のことを120として伝えるのではなく、100のことを正しく100として伝えられる人をプレゼンターに選ぶのである。正しく伝えるということは、誠意を示す重要な指標だ。また担当者に急用ができたので、私が代わりに説明しますなどと言って営業担当者が代読したりするケースがあるが、こういう態度は注文はいらないと言っているようなものである。意欲も誠意もありませんということを正直に示しているだけだ。

 ベンダーはプレゼンに最強、最適の社員を当てるべきである。その社員は会社の代表であり、その提案を具現化した存在なのだから。「かわいい戦略による意思決定」をばかにはできない。あなたのプレゼンを聞きながら、ひそかに「かわいいじゃないの」とつぶやく顧客がいるかもしれない。

クイズの答え

 大豆1リットル、ゴマ1リットルを混ぜても2リットルにはなりません。大豆の隙間にゴマが入り込むので容量は倍にはならないのです。大豆1キログラムとゴマ1キログラムを混ぜたものは2キログラムです。

 定量的な評価は信頼性がありそうでが、数字の意味を吟味しないと意味をなしません。

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プロフィール

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、 CIO育成支援アドバイザー、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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