モデルの違う組織から学べることIT Oasis(2/2 ページ)

» 2009年01月22日 14時20分 公開
[齋藤順一,ITmedia]
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自治体の組織内でのIT力

 戸籍や年金の取り扱いは法律で公務員が担当することが決まっている。これに対し、IT関連業務は基幹業務とは見なされないため、アウトソースの対象になりやすい。

 当初は職員を育成してIT企画や運用ができる人材を確保していたが、コスト削減のため業者に委託する範囲を広げていったので、ITを企画したり、システムを構築できる人材がいなくなってしまった。今では役所の中にどのようにネットワークが張り巡らされているか熟知している職員がいないといった状況の自治体もある。

 最近、自治体ではCIOやCIO補佐官を外部から任用することも行われるようになった。

しかし、CIOの役割をあまり理解せず、単なるコストカッターとして使っている例も多いようである。入札で何割カットしたといったことが成果として報告されたりしている。

 ある自治体で3部屋のパソコン教室に導入するPCを入札で購入した。1年で買う予算がなかったので、3年度に分けて入札した。その結果、それぞれの教室は別々のベンダーから購入することとなり、全体を管理するサーバはさらに別のベンダーからということとなった。その後の運用にあたって、不具合を切り分けるのに大変な手間がかかり、管理費用も高くついてしまったそうである。

 ITでコストカットするのは容易である。ITはサービスであり、モノ作りにおける強度計算や熱計算のような制約はないので、拡張性を考慮しない、異常処理や例外処理を少なくする、セキュリティを甘くする、堅牢性は目をつぶるといった対応をすればいくらでも安くなるのである。

 CIOの役割は首長の補佐とIT戦略の策定、遂行、ITのライフサイクルマネジメント計画である。こうしたことは、民間企業のCIOおよび情報システム部門でも似たようなことが起こっているのではないか。

 また自治体内には情報システム部門がある場合が多いが、情シスはプロセス内の組織であり、役割はシステムの運用管理である。IT戦略を立案する情報企画部門を創設すべきであろう。CIOはその任に当たるべきである。内部に適当なCIO候補がいないときは、外部専門家を招請しCIOを担当させるとともにCIO育成を担わせることを勧めたい。

 こうして見てみると、くどくど筆者が説明せずとも、自社のIT戦略や組織運営の問題、そして突破しなければならない点が明確になってくるのではないか。

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プロフィール

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、CIO育成支援アドバイザー、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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