コラム
» 2009年01月27日 12時25分 UPDATE

闘うマネジャー:「もしもの時どうなさるのですか」――分割発注への疑問に答える (1/2)

システム構築を分発注で仕事を進める際、個々の仕事をどのようにつなげるのか不安を感じる向きもあるようだ。しかし日常の仕事をどのようにこなしているかを考えれば、解決策は見えてくる。

[島村秀世,ITmedia]

口頭での指示とメモ付きの支持

 前回のコラムでも書いたが、長崎県庁の発注手法である「ながさきITモデル」では、分割発注が要なのだが、「どうやって分割したらいいのか分からない」とか「分割したら、それぞれの仕事をつなげるのが大変なのではないか」などの質問が寄せられる。

 回答を書く前に、仕事をどのような感じでやっているか、改めて考えたい。例えば、住所が変わったり、家族が増えたりすると手当の申請を行うが、どうやっているだろう。システム化以前は、次のような手順で行っていた。

(1) 本人が申請書(通勤経路変更届、家族状況変更届)を書く。

(2) 課内の庶務事務担当者が基本的なチェックを行う。

(3) チェック完了後、課長に決裁をもらう。

(4) 人事課に提出する。

(5) 人事課内の手当担当者が最終チェックを行う。

(6) 人事課長が決裁する。

(7) 人事課内の給与担当者が、給与システムに手当の変更指示を入力する。処理終了後、手当簿に申請書を束ねる。

(8) 情報政策課の給与システム担当者がシステムへの反映結果を印刷し、本人へ通知する。

 7人もの人が、申請書1枚に携わっている。その他、申請者本人に「お子さんが生まれたんですね。家族状況変更届を出して下さい」と知らせる役目の人も現実には必要だ。大抵、庶務事務担当者が兼任するのだろうが、大事な仕事だ。

 ところで、人はどんなタイミングで仕事を始めるのだろう。実は以下の3つのタイミングしかない。

(A) 連絡されたので始める

(B) 時間になったので始める

(C) 気がついたので始める

 上記の(1)〜(8)は、全て(A)、(B)、(C)のいずれかに分類される。

 次に各人が実際にいつ仕事をするかだが、生真面目な人ならいざ知らず、決裁文書が来たら直ちに確認し決裁印を押す課長なんていない。決裁箱がある程度溜まったら、書類の確認を始めるような感じではないだろうか。担当者も課長に「決裁をお願いします」なんていちいち言わない。決裁箱にそっと入れておくだけだ。各人とも相手の事など気にしていない。言葉は悪いが、それぞれの役割に従い勝手に仕事をしているだけだ。つまり人は、一連の業務を一気に処理するのではなく、分割して都合のよいタイミングで処理している。

 各人が勝手に仕事をしているのに、なぜ、一連の業務が滞りなく完了するのだろう。これの答えは簡単だ。申請書が「してもらいたい仕事を書いたメモ」の役割を果たしているからだ。メモに従って役割をこなせばいいだけなので、いちいち聞かずとも仕事ができるし、直ちに取りかからなくても良い。メモに誤りがなければ、何人もの人が絡んでも正確に処理を完了できるというわけだ。

 業務をうまくこなせないという例もよく見かける。上司が部下に仕事を頼むとき、メモを渡さず口頭で指示する場合がそうだ。日常的な定型的指示なら口頭でも問題ないのだが、非日常的なことを口頭で頼むと誤解が発生しやすい。図1を見て欲しい。「例の件」って何を指しているのか曖昧だから、的外れなことを部下は調べてしまうかもしれない。「文書にまとめて」といっても、どうまとめて欲しいのか分からないので、「取りあえずで作業をして、持って行って怒られたら直せばいい」なんてことになりやすい。

fight090127_1.jpg 図1 上司から部下への口頭での指示

 では、ちょっと面倒だが、図2のように例の件が何を指すのかメモし、かつ文書のレイアウト・イメージもメモに書いて部下にお願いしたらどうなるだろう。部下は的確かつ短時間で処理して結果を持ってくるのではないだろうか。

fight090127_2.jpg 図2 メモに書いて部下に指示する

 システムにおいて口頭指示やメモに該当するものは何だろうか。筆者は、TCP/IPによる通信が口頭指示で、DBへの記録がメモではないかと考えている。

 通信は、2者の間しか分からない外国語を極めて早くしゃべっているのと同じで、何を話しているのか外部の者はちんぷんかんぷんだが、あうんの呼吸で意思疎通ができる。

 一方DBは、誰もが閲覧できるように置かれた受付BOX付きホワイトボードみたいなものだ。例えば、こんな使い方ができる。ホワイトボードに、「○○日までに申請書を出して下さい」と書いておく。それを見た職員は、申請書を書き、受付BOXに申請書を入れ、ホワイトボードに自分の名前を書き込む。事務担当者は、受付BOXから申請書を取り出し、チェックして誤りがなければホワイトボード上の名前の横に○を書き、誤りがあれば×を書いて申請書を取りに来るように職員に知らせる。DBは少し鈍いし手間もかかるが、誰もが閲覧できるし、自分の都合に合わせて作業を行えるという特徴がある。

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