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» 2009年01月29日 08時00分 公開

業績悪化への緊急対策:いま実行すべきは「CRM」

景気が目に見える形で悪化している。この状況では、将来の売上増大より、目の前のコスト削減を優先したいと考える企業も多い。いまやるべきは「CRM」だが、Customer Relationship Managementではない。

[秋山紀郎(アビームコンサルティング),ITmedia]

 米国発の金融危機に端を発する不況により、企業の業績悪化が次々と明らかになってきた。このような状況下では、将来の売上増大への取り組みより、目の前のコスト削減を優先したいと考える企業も多い。顧客との長期的な関係を維持しつつ、着実にコストの最適化を実行するとき、それはCustomer Relationship Managementでなく、Cost Reduction Managementになる。

コンタクトセンター編

 コスト削減の特効薬はないのか――コンタクトセンターの業務オペレーション費用の約7割が人件費である。ところが、この人件費に手をつけることは、業務品質に影響を及ぼすリスクを伴うため、ほとんどのセンターでは拒否反応が出る。ここで、効率の良いオペレーターの人件費削減策を考えてみる。

  •  1.人員調達が可能な場所に移転する
  •  2.外部委託(アウトソース)する
  •  3.アウトソーサーとの単価交渉を行う
  •  4.トレーニングを強化する
  •  5.BPRを実施する
  •  6.システム化範囲を拡大し業務の簡素化を進めて、採用条件を緩和する

 1と2は、原則として業務オペレーションをする要員が変わり新メンバーへの業務ノウハウの引継ぎを伴うため、リスクが高い。期日までに必要人数を確保できるかというリスクもある。3は、相手との交渉ごとのため実現性は不透明。過度な単価削減は優秀なスーパーバイザーの流出といった悪影響が懸念される。4や5は、業務効率向上は期待できるが、トレーニングあるいはBPRによる効果に相当する人員をカットしない限り、直接的な人件費の削減にはならない。

 6はシステム投資を伴うこともあり、トータルとしてのコスト削減効果が速やかに出るとは言い難い。リスクを伴わないビジネスは存在しないが、顧客への応対品質の劣化が懸念される案は、売上見込みが厳しい状況下においては、経営者も踏み出しづらいところだ。

 ところが、これ以外の方法で、コスト削減を着実に実行している企業がある。

SaaS型にならうこと

 株価の乱高下に象徴されるように、変化の激しいビジネス環境においては、資産をなるべく持たないことがいいとされる。システム導入に関して、資産を持たないソリューションとして、飛躍的な成長をしているのがSaaS(サービスとしてのソフトウェア)だ。当初、SaaSの導入に積極的だったのは中小企業だった。巨額なシステム投資予算の確保が困難であり、すぐにでも利用したいというニーズに適合していた。最近では、企業の規模にかかわらず、サーバ型のパッケージシステムのアップグレードをあきらめてSaaS型に切り替えていく企業もある。

 SaaS型に切り替えることで、初期投資を抑え、必要ユーザー数と期間に応じたサービス費用のみを負担することで、システム保守コストの削減にもつなげている。必要ユーザー数に応じたサービスモデル化がコスト削減の仕掛けとなっているのだ。

コンタクトセンターのサービスモデル化 

 コンタクトセンターの業務を自社の社員で実施している場合、そのコストは固定費だ。アウトソースしている場合でも、要員数を柔軟に変更することは難しく、契約条件によって、数カ月前から人数の変更制限がある場合が多い。現実として、数カ月前から要員数(業務量)を正確に予測することは困難であり、安全値を見込んだ要員数を確保することで、過剰人員による業務を行うことも多い。ただし、この過剰人員による「無駄なコスト」は経営層には見えていない。

 むしろ、少なめの予測によって、応答率やサービスレベルが低下した場合のみ経営層にレポートされるため、コンタクトセンターの現場としては、やはり、安全値を見込むことになり、無駄なコストの発生を助長することに結びついている。

 いずれにしても、業務量に応じて要員数を柔軟に変更できないのであれば、それは固定費と同じことだ。つまり、資産化しているのである。SaaS型の成功モデルにならうと、資産を持たず、利用ユーザー数に応じたサービスモデル化をするということになる。つまり、コンタクトセンターでいえば固定的な人件費という資産から、必要人数と期間(時間)に応じてサービスフィーを支払うサービスモデルへの変革をするのが、今、求められる施策ということになる。

 コンタクトセンターのオペレーションを必要人数に応じて費用を負担するサービスモデルに変更するには、要員数のコミットが直前でも許される仕組みが求められる。それは、まるでオペレーターのプール(集合体)があり、必要人数を必要な期間(時間)だけ、すぐに切り出すイメージである。また、サービスモデル化への変革には、もう1つ必要な要素がある。要員数に応じて必要となっているコンタクトセンターの設備に柔軟性を持たせることだ。必要人数の変化に応じて、設備を自由に変更できることが求められる。

SaaS型コンタクトセンター

 コンタクトセンターの要員も設備も、必要人数と期間によって変更できるサービスモデル、それは、SaaS型コンタクトセンターである。

 これは、従来は企業内に設置して資産として所有していた音声系の機器類をSaaS型として実現している。このことにより、企業内で固定的になっていた要員についても、場所を問わずに業務をすることが可能となり、いわゆる在宅勤務が可能となるのである。PC、ヘッドセット、ブロードバンド環境があれば自宅で業務が可能だ。

在宅勤務の課題

 コンタクトセンターのオペレーションをサービスモデル化することで、コストを最適化できることは分かっていても、実際に在宅オペレーター実現への障壁を感じている企業も多い。最も多い懸念が、労働環境とセキュリティーの問題だ。在宅オペレーターの先進事例では、オペレーション中に、周囲の音(子供の泣き声や道路工事の音など)が入った場合、すぐに在宅勤務者の契約は解除される。したがって、雇用を維持するためにも労働環境の整備は自ら責任を以って実施している。

 自宅にて顧客の個人情報に触れるのを避ける方法としては、その部分のみIVRで確認するなどの方法がある。それでも、在宅勤務を検討できないのであれば、1つ質問する。これまで、企業内でのコンタクトセンターでは、情報漏えいなどの事件は起きていなかったか。ビジネスにリスクはつきものだ。でも、そのリスクを乗り越えて、実現したときに、本当に成果があらわれる。

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