「組織を超えろ」――リーダーが示す最強のメッセージ職場活性化術講座(2/2 ページ)

» 2009年02月03日 12時39分 公開
[徳岡晃一郎,ITmedia]
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周到なお膳立てで改革を進める

(3)みなの口を開かせる

 コーチとしては多種多様なメンバーがみなイノベーションに貢献できるように導かねばならない。それぞれの個性や能力をフルに発揮してもらった方がいい、というのがダイバーシティの考えだ。クロスファンクショナルチーム(部門横断チーム)を引っ張る場合も出てくる。このような時は、メンバーが互いに知り合いではないかもしれないし、部門同士の仲が悪い(ネガティブなメンタルモデルを持っている)かもしれない。また、研究者によくあるように口の重い人もいる。KYで周囲が読めずに、逆方向に行く人もいるかもしれない。

 それでも語ってもらうためには、効率化志向の雰囲気を遮断し、議論がみなを成長させる、互いの発想から学ぶことが必ずある、などのイノベーションの価値観を強調したり、人々の間のケアの意識(互いの成長を助ける役割)を醸成することが欠かせない。リーダーが忙しすぎたりせっかちな雰囲気を出すと、まわりが話をしにくくなる。

(4)質問とストーリー

 このようなお膳立ての上で、リーダーは質問とストーリーという2つの手法で、みなの思いを引き出すのである。質問とは、既存の信念や正当性に切り込んだり、世間の風潮や流行言葉に迎合しないように発想を変えさせる投げかけだ。「これまでの発想の前提は何だと思うか?」「まったくゼロからやるとしたらどうしたいか?」「株価は関係ないとしたら?」などと投げかける。Why(なぜそうでないといけないのか?)とWhat if(もしxxがおきたらどうなるの?)という疑問がよく使われるパターンだ。

 ストーリーとはリーダーが思うイノベーションのイメージを語り、そんな旅路でどんなことが起きたら面白いのだろうかと発想を飛ばしあうことだといえよう。独創的に考え、ヒントを紡ぎ出し広げていくきっかけになる。

 このようなコーチ役をやりながら、リーダーは何をしているのだろうか? それは、メンバーの中に自然とできてしまう「持ち場・立場」の分業意識を払拭しようとしているのだ。「組織のメンバーが、自ら組織を超えるメンバーになっていかないと、組織は発展しない」。それがイノベーション・コーチのメッセージだ。ぜひ一歩引いて職場を支える役に回りになり、活性化させて欲しい。また、これまでの10回シリーズをもう一度振り返って、リーダーシップの10の型を身につける旅路に出発してほしい。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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