大塚商会の決算にみる中小企業のIT投資の行方Weekly Memo(1/2 ページ)

大・中・小規模の企業がほぼ均等で合計77万社に及ぶ顧客を持つ大塚商会の決算状況は、企業のIT投資の実態を示す指標ともいえる。先週、明らかになったその内容とは――。

» 2009年02月09日 09時54分 公開
[松岡功ITmedia]

「SPR」で示す日本企業のIT化の縮図

 「企業におけるIT活用の潜在ニーズは底堅いものの、景気悪化の影響で買い控え傾向が顕著になり、とくに第4四半期以降、IT投資の抑制傾向が一段と強まった」

 先週3日に2008年度(08年1-12月)の決算を発表した大塚商会の大塚裕司社長は会見で、前年度に比べて減収減益となった08年度の概況をこう語った。

 発表によると、連結売上高は前年度比0.5%減の4671億5400万円、営業利益は同9.9%減の270億8900万円、経常利益は同9.5%減の276億2800万円、純利益は同23.8%減の143億7100万円。前年度まで5期連続で増収増益を続けてきた同社も、未曽有の経済不況の前に急ブレーキがかかった格好となった。

 大塚商会の決算が注目されるのは、中堅・中小企業を中心に幅広い業種にわたる77万社の顧客を持つ同社の業績動向が、企業のIT投資の実態を示す指標ともいえるからだ。

 しかも、その基盤には「SPR(Sales Process Re-engineering)」と呼ぶCRM(顧客管理)とSFA(営業支援)の機能を併せ持った独自のシステムがある。これによって、データに基づく科学的なアプローチによる顧客満足と効率的営業を同時に実現しているわけだ。77万社の顧客・営業情報が描き出す姿は、中小が多数を占める日本企業のIT化の縮図ともいえる。

 そんな同社の業績内容を少し詳しく見ると、事業別の連結売上高では、システム保守やオフィスサプライ通信販売などのサービス&サポート事業が前年度比6.1%増の1987億6100万円と堅調だったものの、売上高の約6割を占めるSI事業が同4.7%減の2664億7600万円と落ち込んだ。

決算会見に臨む大塚商会の大塚裕司社長

 SI事業は新規や更新案件が多いだけに、IT投資抑制の影響を大きく受ける。しかし、サービス&サポート事業はストックビジネスが多いだけに、IT投資にすでに織り込んでいる企業が大半だ。同社の業績もそんな事業毎の性質を如実に反映した結果となり、大塚社長は「あらためてサービス&サポート事業の重要性を痛感した」という。

 顧客動向を示す数値で気になったのは、顧客企業の年商別の売上構成比だ。年商別に、10億円未満が26.87%(07年度は28.17%)、10〜100億年未満が28.47%(同28.23%)、100億円以上が44.66%(同43.60%)となり、10億円未満の企業の減少が目立った。小規模・零細企業の厳しい状況が、数値の一端に表れている。

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