「古くさいサイトと利用者が感じたら、二度とホームページには来ない」――。小野氏が大事にしたのは「ユーザーにとって第一印象のいいホームページ」作りだ。大幅な機能の追加以外に、画面の横幅を従来の1.2倍にしてゆとりを持たせるなど、細部の作り込みにもこだわった。
「Yahoo!などの主要ポータルサイトがこぞってレイアウトを拡大したこと」(小野氏)がそのきっかけになる。「こうしたサイトを見慣れた人が刷新前のホームページに訪れると、窮屈さを感じるのでは」と危惧し、一般的なユーザーが見慣れているホームページの見栄えを意識した。
カーソルをメニューに当てると、ページの遷移を伴わずに、最下層にあるコンテンツを表示できる「ドロップダウンメニュー」も採用した。その理由は「多くのホームページで使われているコンテンツの表示手法だったので、顧客も迷わず使える」(小野氏)と判断したからだ。
日々多くの利用者が訪れる主要なポータルサイトやホームページには、ユーザーをサイトから離脱させない仕掛けがたくさん詰まっている。ユーザー視点に立脚しつつ、こうした技をくまなく取り入れることに努めた。
企業が扱う情報は増加の一途をたどっている。それに伴い、情報を掲載するWebページやコンテンツも増えてしまう。とはいえ、気軽にホームページをスクラップアンドビルトすることはできない。
こうした背景の中、JALがリニューアルを敢行したのは、ホームページからの売り上げを増やしたいという確固たる軸があったからだ。
「例えば値引きをウリにしているEC(電子商取引)サイトにおいて、商品の申し込みフォームが入力しにくく、決済に時間がかかったとする。この時顧客がホームページに対して感じる価値は、値引きという要素からサイトでの行動に費やした苦労を差し引いたものになる」(小野氏)
こうした点をふまえて、「少ない手間で必要な情報を手に入れたい」という顧客の要望、「顧客を囲い込みたい」というJALの目的――その双方を確認し直した。「あらゆる要望や機能を1つのホームページで実現するのは不可能」(小野氏)と考え、2つの目的を達成する解として、機能を切り出して提供できるガジェットや、必要な情報をサイト内に自動表示できる推薦エンジンの導入を導き出した。
「クリックという行動を取ってもらうことで、有益な情報が初めて顧客に届く。この手間を超える価値を提供するのがホームページの役目」と小野氏は力を込める。
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