ルノーF1チームのグリーンIT作戦画面オフから徹底したい(1/2 ページ)

F1マシンの開発・製造にITが欠かせない。世界同時不況でF1の世界でもコスト削減が叫ばれる中、自動車メーカーRenault(ルノー)のF1チームは電源コストの削減を進めている。

» 2009年02月27日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 従来、自動車レースの最高峰F1では数百億円にもなる莫大な資金と技術を費やして、競争力のあるレースカーの開発が行われていた。しかし、近年は環境対策や世界同時不況の到来によってコスト削減が最大のテーマとなっている。

 レースカーの開発にはITが不可欠な存在となる一方で、コスト削減の対象はF1チームのIT部門も例外ではない。シマンテックがこのほど行ったグリーンITに対するユーザー事例の紹介で、フランスの自動車メーカーRenault(ルノー)のF1チームが、電力コスト削減に向けたデータセンター効率化への取り組みを説明した。

コスト削減の波

 ルノーのF1チームは総勢900人のスタッフを抱える。運営拠点は英国だが、レース用エンジンの開発・製造をパリ南部の技術センターで、車体の開発・製造を英国オックスフォードの技術センターでそれぞれ行っており、両拠点にデータセンターを設置している。これとは別に開発したマシンの走行テストや実際のレースで、一時的にサーキットにもデータセンターと接続するためのシステム環境を設置する。

開発センターとサーキット(レース会場およびテスト走行会場)におけるデータの流れ

 現代のF1チームの年間予算は、数百億円から1000億円以上になるとも言われる。同チームは詳細な予算額や内訳を公表していないが、IT部門が関連するコストは、データセンターから個々のスタッフが利用するクライアントPCに至るまで大きな割合を占めるとみられる。

 F1レースの運営を統括する国際自動車連盟は近年、F1に関わるコスト削減を掲げて、大規模な規則の改定を進めている。その範囲は、レースカーの開発からエンジンの使用回数、燃料だけでなく、レースカーが発する莫大な廃熱を再利用するというものまで含まれる。例えば2008年の燃料規定ではバイオ燃料の使用が義務付けられたが、2011年にかけて規制が順次強化され、使用可能な燃料の総量削減や、燃費向上につながるエンジンの開発などが盛り込まれている。

 数々の規制の中で、特に大きな影響を与える可能性があるのが今年から実施されるレースシーズン中のテスト走行の禁止だ。レースカーの開発では、例えば空気抵抗を減らすために設計したボディパーツなどの効果をテスト走行で確認するが、2008年までシーズン期間中でも日常的にテスト走行が行われていた。しかしテスト走行の大幅な制限によって、今後はコンピュータによるシミュレーションへの依存が大幅に高まる。これにより、F1チームのITコストも高まることが予想される。

 ルノーF1チームのCTO兼ITマネジャーを務めるグラエム・ハックランド氏は、「今年のチームにおけるIT予算は大幅に削減された。一方でマシン開発におけるITの重要性が高まり、生産性を高めるために電力コストの削減を進める計画だ」と話し、特にデータセンター設備の見直しを重点に掲げている。

 チームが保有する2カ所のデータセンターは2007年に稼働した。稼働当初は、電力の効率化を含めた「グリーンIT」が考慮されていなかったという。

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