HPがSunを買収する日Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年03月02日 09時01分 公開
[松岡功ITmedia]
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プラットフォームを包含するクラウド

 かつてのIT業界では、主戦場で激しくぶつかり合っているライバル同士が、“軒下を貸して母屋を取られる”ような提携を行うことは滅多になかった。しかし今回、HPは「顧客の要望に応えるために」、SolarisをProLiantの主要OSの1つに採用した。

 こうした動きはもちろん、ハードでもソフトでもオープン化が進むとともにあちこちで見られた。が、そのオープン化をリードしてきた二大巨頭であるHPとSunが、しかもSunの生命線であるSolarisを対象に手を結んだことは、時代の大きな変化を象徴しているように思えてならない。

 今回の提携発表リリースの最後にこんな説明があった。

 「(今回の両社の提携によって)x86版Solarisの利用を希望するHP ProLiantユーザーの皆様は今後、データセンターに必要なあらゆるインフラソリューションを一元的に調達することが可能となり、購入手続きが簡素化され、コスト効率も向上します。さらに、HPはHP テクノロジーサービスを通じて統合ソリューションの問題解決を担当し、Sunは自動更新サービスを通じてソフトのアップデートを提供します」(抜粋)

 これは取りも直さず、クラウド時代を見据えたビジネスのあり方を示したものだといえる。

 UNIXであれ、メインフレームであれ、Windowsであれ、エンタープライズビジネスを展開するITベンダーにとって最も重要なのは、長年築き上げてきた自らの顧客ベースである。ITベンダーはオープン化が進んでも、自らの顧客のために必要な製品やサービスを整備してきた。

HPとの提携でSolarisの普及拡大に努めるSunのジョナサン・シュワルツCEO

 それが、これからオンプレミス(自社運用)からクラウド利用にシフトしていく中で、どう変わっていくか。クラウド化もエンタープライズビジネスの一環として展開するITベンダーにとっては、これまで以上に顧客ベースの拡大が勢力争いの決め手となるだろう。そのクラウド化で見据えておかなければいけないのは、多くの顧客にとってはクラウドになってもプラットフォームそのものは変わらない可能性が高いことだ。

 その点、Solarisは世界中の数多くの優良顧客が支えている。HPのプラットフォームを支える顧客ベースも同様だ。その顧客ベースという観点で、クラウドは異なるプラットフォームを包含する格好のソリューションとなるだろう。

 そうなると、立ち位置が近いことが、逆に武器になる可能性もある。オープン系では世界最大級の基幹業務システムに両社のエンタープライズUNIXサーバを混在させて利用している国内最大手の携帯電話会社のようなユーザーに、新たなソリューションを提案することもできよう。

 そう考えていくと、今回の提携を発端に、この不況下でも手堅い業績を上げているHPが、業績不振の続くSunを買収するようなことが起こってもなんら不思議ではない。

 もっともビッグネーム同士の合併・買収も、クラウド化で根本的に意味合いが変わってくるかもしれないが……。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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