「情報処理技術遺産」にみる温故知新Weekly Memo(3/3 ページ)

» 2009年03月09日 10時59分 公開
[松岡功ITmedia]
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国産コンピュータメーカーの“IBM対抗の歴史”

 こうしたIBMとの対立構造が明らかになった中で、62年に富士通、NEC、沖電気工業の3社が超大型機の開発を目的に「電子計算機技術研究組合」を結成した。これは60年に通産省が打ち出した「電子計算機国策会社(案)」の意を受けたもので、超大型機は3社の頭文字を取って「FONTAC」と名付けられた。

 3社の共同開発によってFONTACは64年に完成。大型/超大型機時代の到来を告げるとともに、国産メーカーとしての気概を見せつけた。

 そして64年、IBMが世界のコンピュータ産業発展の歴史に大きく名を残した汎用機「システム/360」を、70年には「同370」を発表した。これに対抗して日本では72年に通産省主導で、富士通と日立のIBM互換機路線を柱とする国産6社3グループの共同開発体制ができ上がった。

 その後の変遷も含め、90年代に入るまでの国産コンピュータメーカーの歴史は、まさにIBMにいかに対抗するかが底流にあった。だが、そのIBMも90年代に入ってオープン化やダウンサイジングといった市場の新潮流への対応に苦慮し、大幅なリストラを断行する事態となった。

 そして今、オープン化からインターネットが出現して普及し、クラウドコンピューティング時代の入り口を迎え、コンピュータメーカーには新たな発想による製品開発と事業への創造性が求められている。とりわけ国産メーカーには、かつてのリレー式コンピュータやパラメトロン・コンピュータの開発で見せた独創性と情熱を、今こそ大いに発揮してもらいたいものだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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