企業ITサービスを支えるブレードサーバ

導入のプロの太鼓判――ブレードサーバ選択の心得現場の声を聞け(2/2 ページ)

» 2009年03月16日 08時00分 公開
[横田貴司,ITmedia]
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サーバの全停止を招く熱問題

 これまで、サーバを集約することで得られるメリットを説明したが、その代償としてのデメリットも存在する。それは発熱の問題だ。ハードウェアの密度が高いため、どうしてもラック型に比べると発熱量は大きくなる。そのため、実運用時の要件も厳しいものとならざるをえないのだ。データセンターやサーバルームのファシリティによっては運用そのものが難しいケースもあるだろう。

 熱対策は、製品選定の要素としても重要だ。ブレードサーバの設計自体にも、各社工夫をこらす中で差が存在する。熱が通りやすい場所に重要なパーツがあったりすると最悪の場合全停止してしまうこともある。特に共有部分の設計には注意したい。伊藤忠テクノソリューションズの杉田氏は次のように説明する。

 「ミッドプレーンなどの共有部分はすべてのブレードに影響を与えるため、その可用性は非常に重要です。熱や衝撃による故障を回避するため、最低でも冗長化されているか、あるいは電子部品を極力少なくし、メンテナンスフリーに近い設計であることが望ましいです」

 また障害時だけでなく、パーツ交換などのメンテナンスを行う際にも、場合によっては全停止をしなければならない可能性もある。

 共有部分を持つことでエネルギーと管理の効率を向上させる一方、1カ所の障害が大きな影響を与えてしまうというマイナス面も持ち合わせているのだ。

 エンクロージャに空き部分がある場合も注意が必要だ。ブレードが差されていない箇所にシャッターをしないと、空気の流れが変化して冷却効率が下がり、発熱のためにダウンしてしまうこともある。このような細かな指示を、多忙な運用の現場に徹底させるのは簡単なことではない。ブレードを抜くと自動的にシャッターが下がるようになっているなど、実運用周りのトラブルを避けられる設計になっているかどうかも、目立たないが大切なポイントである。

 また、熱対策のための冷却費用も小さくはない。サーバ集約により削減できるコストと比較し検討する必要がある。

ブレードはやっぱり高い?

 上に述べたようなコスト面ではどうだろう。一般にブレードは高い、という認識があるだろう。確かに、初期導入コストは決して低くはなく、どうしても敷居の高い感は否めない。

 ただ、ブレードサーバは集約することでメリットを発揮する。野村総合研究所 上級研究員の古明地正俊氏は「ブレードサーバの筐体はどうしても割高です。しかし、大量に導入することでメリットは出てきます。ある程度の規模であれば順次ブレードに移行するという選択肢は間違いではないでしょう」と指摘する。

 一方、伊藤忠テクノソリューションズの杉田氏は「弊社での試算の結果、最近ではブレードサーバもコモディティ化が進み、価格あたりのスペックは、通常のラックマウントと比べてあまり差はありません。ただし、それにはブレードの拡張性が確保されていることが条件です」と説明する。特に大きな影響を与えるのがメモリの拡張性だ。スロット数が少ないと容量あたりの単価が高い大容量のメモリを使用せざるをえず、コストの負担が大きくなる。ブレードの数が増えるほどその差は広がっていくので、製品を選定する際には注意が必要だ。

 ブレードでコストメリットを出すにはそれなりのサーバ数が集約されることが求められる。当然管理しなければならないサーバは増大し、人力ではとても管理できない状況となる。場合によっては管理ソフトウェアを変更しなければならないこともあるので、それも踏まえた運用計画が必要になる。

拡張性とダウンタイムの少なさが導入のカギ

 それでは、ポイントをまとめてみよう。

 ブレードサーバのメリットを生かすには、何よりまずある程度以上の数のサーバを統合することが必要になる。かつ、ブレードに拡張性が備わっていないとコストメリットを得るのは難しい。またその構造上、電源やスイッチをエンクロージャで共有するためエネルギー効率は上がる反面、障害時にすべてのブレードが全停止してしまう危険もはらんでいる。これをチャートにしてみると、下記のようになる。

伊藤忠テクノソリューションズ資料より

 NTTデータの吉田氏は「ブレードサーバに関しては、以前に比べてベンダー、データセンター側もだいぶ場数を踏んできています。必要であれば、これからは導入のしどきであると言えます。本来は効率のいいものなので、求めるものに合致すれば入れる価値はあるでしょう」と説明する。

 ブレードサーバは製品ラインアップも増えており、選定が難しい状況になっている。もう一度基本に立ち返り、効果的なIT投資に役立ててほしい。

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