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» 2009年03月16日 13時10分 公開

システムの見える化:ムダとりとサービス向上を実現させよ

ビジネスの変革に迅速に対応するITが今ほど求められる時代はない。混乱や停滞を恐れず、ITサービスレベルを上げるにはどうすればいいのか。ITサービスマネジメントの専門家であるロバート・ストラウド氏に話を聞いた。

[大西高弘,ITmedia]

システム変更に伴う影響度を把握

 ロバート・ストラウド氏はCAのサービスマネジメント担当バイス・プレジデント。同社のITサービス・マネジメント&ITガバナンス・エバンジェリストを務める。ストラウド氏は、26年におよぶIT業界での実践経験を持ち、ユーザー企業に直接かかわってきたほか、ISACA(情報システムコントロール協会)やITGI(ITガバナンス協会)のインターナショナル・バイス・プレジデントとして活躍している。また、ITGIのCOBIT運営委員会では議長を務めるほか、さまざまなIT関連フォーラムのボードメンバーに名を連ねる。ITIL関連の著作も多く、ITILの改訂作業では監修やレビューを行っている。

 そんなITサービスマネジメントの専門家が先ごろ来日したのを機に、正確さとスピードをより求められる、ITサービスレベルの向上の方策について聞いてみた。

 ストラウド氏は、その方策についてポイントになるのは、システムの見える化だと答える。

 「ここで実現したい見える化というのは、ただ単に現状が分かるというものではありません。要求された変更を行うとすれば、一体各アプリケーションにどういう影響が出るのか、その影響はシステム全体に対してどれぐらいの重要度なのか、といったことが分かるということです。そしてその変更が履歴として確実に残され、別の変更作業の際も確認ができるということ、また変更についての影響を社内のあらゆる担当者に適切にレビューされるかということが大切です」

「適切なシステム管理が行われれば、コスト低減も進んでいく」と語るCA サービスマネジメント担当バイス・プレジデント、ロバート・ストラウド氏

 あらゆる担当者に適切にレビューされる、というのは担当者それぞれに合った変更に関するレビューができる仕組みを提供することだと、ストラウド氏は話す。

 「システム担当者の中でも、例えばITマネジャーは変更が及ぼす影響に関する分かりやすいレポートが見たいし、セキュリティ担当者はリスク管理を把握したい。また、業務サイドでは部門ごと、システムごとにIT投資額を整理したい。調達担当は契約やベンダーの管理をする必要があるし、経理担当はコストの配賦、管理をしたい。資産管理担当は資産のライフサイクルという観点から変更について把握したいわけです。このように、さまざまな規模のシステム変更に関して、社内の各担当者が自分の知りたい情報を正確に把握することが大切であり、そうしたレベルの見える化を実現して初めて、ITサービスのレベルアップが可能になります」

 予測されるインパクトと障害の把握、そして適切なレビューによって、システム変更による業務の停滞を最小化し、結果としてITサービスレベルが向上するというのがストラウド氏の主張である。現在の経営環境では、できるだけIT投資も抑えたいところだがビジネス上での競争力維持のためにはどうしても必要なシステム変更はある。また、変更にはスピードが求められるが、IT部門内のみならず関係部署との変更情報の共有は必要だし、変更作業そのもの以上にレビューのスピードも上げていかなければならない。

 「ある会社で、受発注システムの変更が行われました。一見、単純なことだと考えがちですが、部分的なデータ入力の変更であっても、それが及ぼす影響は多大なものです。データベース、ネットワークなどあらゆるコンポーネントが関わってきます。受発注システムが止まればビジネス上の大きなリスクになる。この会社では慎重に変更が行われたのですが、それでも深夜に障害が起こりました。しかし朝からシステムをストップさせてでも取り除かなければならない障害ではないことが分かりました。そこで最もリスクの少ない方法でシステムのメンテナンスを実行することができたのです。こうしたリスクに対する判断を行えるかどうかも、ITサービス分野では重要な課題です」とストラウド氏は話す。

 スピードだけを追求していては、変更に関する影響度の把握がおろそかになり、後々障害が起こっても、どう対応していいのか分からなくなる。また、変更に次ぐ変更で他部門に必要な情報を提供することが遅れて結局稼働が遅れてしまっては元も子もない。

ムダとりをしながら、サービスを向上させる

 こうしたストラウド氏の話は、ITILにおける「インシデント管理」「問題管理」「変更管理」「リソース管理」「構成管理」のプロセスに基づいている。では、そのプロセスを効率的に実行するにすどうすればいいのか。ストラウド氏はCMDB(構成管理データベース)を挙げて説明してくれた。

 「このツールは企業のシステムを構成する各構成アイテムの属性および履歴に関わる情報、構成アイテム間の依存関係、関連性を一元管理するものです。企業のシステムは非常に複雑になってきており、その運用方法も多様化しています。例えばさまざまな用途に利用するストレージとネットワークは互いに関連性を持って稼働していますが、その運用はアウトソーシングされている場合などがあります。CMDBを活用している企業は、社内の技術資産の管理にこれを活用していきながら、さまざなアプリケーションの変更に伴う障害診断などに利用するようになっています。これまでシステムの細かな設定状況やコンポーネントの関連性、依存関係などは社内の専門家の頭の中にあったわけですが、これをこのツールに内包させることで、社内の多くの担当者がレビューができるようになり、複雑なシステムの変更が常に更新されるようになります。技術資産の継承という観点からも、こうしたツールは今後ますます重要になってくるでしょう」

 ビジネス環境が変化し、システムは年々複雑化していく中、ITの運用環境はまだまだ社内の専門家の知識、経験に依存しているケースが多い。情報が集中してしまった状態では、システム変更や障害対応についても負担が集中するし、社内にシステム変更に関する情報を提供する場合も一部の人に問い合わせが集中してしまう。CMDBはシステム担当者にとっても、そのほかの担当者にとっても情報が一元的に管理され、必要に合わせて状況を把握し、対応することができる。「廃棄したサーバーにインストールされていたソフトウェアのライセンスを何カ月も支払っていた」といったことはよくあることだが、一元管理されることでこうしたムダなどもかなり減少すると考えられる。

 これからのITサービスは統合サービスでなくてはならない、とストラウド氏は話す。

 「われわれはユニファイドサービスモデルと呼んでいます。それぞれの人の役割ごと、業務ごと、またセキュリティといった分野ごと、さまざまな切り口で必要な情報を閲覧できるようにするという考え方です。それを実現するベースとなるのがCMDBに代表されるツール群です。CAでもこの春から夏にかけて日本市場にCMDB製品を投入していきます。システム全体を把握し、変更や障害対応、コストなどに関する情報を全社的に共有するCMDBは運用コストの低減とITサービスレベルの向上を両立させるための道具です」

 ITサービスのブラックボックス化を防ぎ、システム全体に光を当てることが効率的で迅速なビジネス変革を実現させる。そうした意味でもCMDBはシステム変更のスピードと確実性を両立させる強力な援軍となるはずだ。

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