企業ITサービスを支えるブレードサーバ

ブレードサーバが仮想化プラットフォームとして選ばれる本当のワケHyper-Vも選択肢に

ブレードサーバは、サーバ統合を目的として導入されるケースが多い。この際、サーバを物理的に集約するだけでなく、サーバ仮想化技術を導入する例も増えつつある。なぜ、ブレードサーバがサーバ仮想化のプラットフォームとして選ばれるポイントはどこにあるのか?

» 2009年03月19日 08時00分 公開
[大神企画,ITmedia]

エッジ用途から、サーバ仮想化向けへ

 ブレードサーバの内部を覗いてみると、CPU、メモリ、ハードディスクなどサーバを構成するパーツが高密度に実装されていることが分かる。この形状から想像できるのは、エッジサーバのように多くのサーバを並べるような使い方だ。事実、黎明期のブレードサーバは、できる限りたくさんのサーバを並べて使いたいというニーズに適していた。

 ブレードサーバにこのようなイメージを持っている人も少なくないだろうが、今のブレードサーバはそのイメージから離れつつある。ブレードサーバの多くは2ウェイのマルチプロセッサに対応しており、4ウェイをサポートするものもある。搭載可能なメモリ容量も十分で、1枚のブレードの性能も、2Uサイズのラック型サーバに劣ることはない。

 したがって現在のブレードサーバは、複数のサーバを物理的に集約して省スペース化を図るという使い方だけでなく、サーバ仮想化のプラットフォームとしても十分なパフォーマンスを発揮する。仮想マシンの性能を気にする人もいるが、ちょっと前のサーバよりも、1台のブレードサーバ上で稼働する複数の仮想マシンのほうがむしろ高速だ。

 ブレードサーバがサーバ仮想化のプラットフォームとして選ばれる前提には、こうした性能の課題を解決したことが挙げられるが、もちろんそれだけではない。サーバベンダー各社がブレードサーバにおけるサーバ仮想化を推すのは、ハードウェアのリソースをより効率的に利用できるからだ。

 サーバベンダー各社は、ブレードサーバ専用の管理ツールを用意している。その管理ツールの多くは、ブレードサーバの物理構成だけでなく、仮想マシンの稼働状況も管理することが可能だ。

 例えば、NECのブレードサーバ管理ツール「Sigma System Center」は、SIGMABLADE上で稼働する仮想マシンを監視・管理できるが、このツールとVMware ESX Serverの「VMware vMotion」を組み合わせると、負荷が高いブレードサーバの仮想マシンを余裕のあるブレードサーバへ動的に再配置するような使い方ができる。負荷が非常に高い場合は、1台の物理サーバ上で1つの仮想マシンを動かせばよい。これならば、仮想マシン同士がリソースを奪い合うことはなく、物理サーバを占有できる。

 もちろん、これはブレードサーバでなくても実現可能だが、異なるハードウェアをまたいで仮想マシンを再配置するには、ほぼ同じ構成のハードウェアが複数用意されているブレードサーバのほうがスムーズに行える。また、どのブレードサーバにも余裕がある場合、一部のブレードサーバに仮想マシンを移動して実行し、使わないブレードサーバの電源を落とすといった使い方も可能。このような省電力運用は、ブレードサーバ以外では非常に難しい。

パフォーマンス、省電力、設置面積などを多角的に評価すると、ブレード+仮想化という選択肢の優位点が見えてくる パフォーマンス、省電力、設置面積などを多角的に評価すると、ブレード+仮想化という選択肢の優位点が見えてくる(日本HP資料より)

すべての仮想化技術をサポート

 現時点においてブレードサーバに導入するサーバ仮想化技術で最もメジャーなのは、VMware ESX Serverだといえよう。どのサーバベンダーもヴイエムウェアとアライアンス関係にあり、実際の導入事例も非常に多い。

 2008年との違いは、Windows Server 2008で提供される「Hyper-V」という選択肢が増えたことであろう。ただし、Hyper-Vはまだ開発ツールの環境が発展途上であると考えられ、本格的な導入事例はまだ少ない。とはいえ、Hyper-VにはVMware ESX Serverと比較して、コスト面での大きな優位性がある。各サーバベンダーに取材してみると、中小規模のオフィス向けブレードサーバと一緒にHyper-Vが導入される例が少しずつ増えているという声も上がっており、規模が小さいマーケットではHyper-Vが主流になっていくだろうと予測される。

 OSSのハイパーバイザ型仮想化技術である「Xen」(シトリックスの「Xen Server」、オラクルの「Oracle VM」などの派生技術も含む)も、Hyper-Vと同様にコスト面で優位性がある。これらは、先進的なユーザーを中心に適材適所で使われている。

 サーバベンダーで唯一、サーバ仮想化技術を自社開発したのが、日立である。同社のブレードサーバ「BladeSymphony」向けに開発された「Virtage」は、日立がメインフレームで培ってきた仮想化機構をIAサーバ上で実現したものだ。Virtageの特長は、堅牢で高性能という点。論理パーティション(LPAR)上で稼働する仮想マシンは、一般的な仮想化技術とは異なり、ゲストOS固有の環境を別に用意したり、アプリケーションを改変したりする必要がない

 さらに、2009年4月から出荷開始の最新ブレードサーバ「BS2000」には、「Virtage(Essentialモデル)」を標準搭載。ブレードあたり2つのLPARまで無償でバンドルされることになった。Virtageは、基幹業務システムやHAクラスタリングシステムなど、仮想化技術があまり使われないミッションクリティカルな領域においても導入実績が豊富だ。

「仮想化専用ブレード」が徐々に登場

 サーバ仮想化技術が一般化したことで、一部のサーバベンダーは「仮想化専用ブレード」と銘打った製品を提供し始めている。例えば、日本HP「HP BladeSystem」の「BL495c」は、AMDのクアッドコアOpteronプロセッサを搭載するとともに、最大128ギガバイトのメモリ、128ギガバイトのSSDを搭載。サーバ仮想化を想定したスペックになっている。

 また、日本IBM「IBM BladeCenter」の「LS42」は、2ソケットのブレードに、ブレードと同じ外形の拡張ブレードを合体させることで、最大4ソケットのサーバ(ブレードの厚みは2倍になる)として扱える。このブレードサーバも、クアッドコアOpteronプロセッサを搭載し、サーバ仮想化に最適だとしている。

 また、NEC「SIGMABLADE」の「Express5800/120Bb-d6」に代表されるように、ヴイエムウェアの組み込み版仮想化ソフトウェア「VMware ESXi」をUSBメモリに内蔵してしまい、そこから仮想化システムをブートできるようにしたブレードサーバも、各社から登場している(ハードディスクにVMware ESXiをプリインストールしたブレードサーバもある)。

 ちなみに、前述の「BL495c」では、USBメモリにシトリックスの「Xen Server」を収めたオプションを提供している(ただし、お試し版である)。

仮想化専用モデルを利用することで、セットアップが容易になる 仮想化専用モデルを利用することで、セットアップが容易になる(IBM資料より)

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