休憩をはさんで午後のセッションからは、「縁の下の力持ち」といえる面々が登壇。サポートのエスカレーションマネジャーを務める大高 卓氏からは、QFE(修正モジュール、以下パッチ)の扱いについて紹介された。マイクロソフトではパッチを「GDR(General Distribution release、全ユーザーに関連する一般的なセキュリティパッチなど)」と「LDR(Limited Distribution release、特定の環境、ユーザーにおいて発生する問題に対処するパッチ)」に分けて管理しているという。
大高氏によると、Windows2000世代の頃まではGDRとLDRを区別せずにパッチがリリースされていたため、「パッチを当てたことによる不具合」が発生してしまっていた。現在ではその反省に立ち、GDRとLDRを個別に管理するとともに、ユーザーがどのパッチを選択したかに関わらず、最も適切な(=先祖返りや競合のない)パッチが当てられると紹介された。
またMS IME開発チームの佐藤良治氏によるセッションで印象に残ったのは、「Influence without Authority(権威なき影響力)」とされるプロジェクト推進方式である。プロジェクトはプログラムマネジャー、デベロッパー、テスターで構成されるが、それぞれに上下の人事関係はないため、各職域がプロフェッショナルとしての緊張関係を持って接しないと、プロジェクトが立ち行かない構造になっている。テスターのミッションも、ただテストするのではなく「テストをオートメーション化するプログラムを書く」というものであるため、能動的な活動が求められるという。
エンタープライズ第一本部の森永裕 氏からは、マイクロソフトが有償で提供する「プレミアサポート」の実態が紹介された。プレミアサポートのユーザー満足度を見ると、「大変満足」としたユーザーが2001年度には20%強にすぎなかったのに対し、2004年度から急激な上昇を描き、2008年度には90%以上のユーザーが「大変満足」の評価を下している。これには「CritSit」という独自の仕組みが影響しているという。
CritSitは、ユーザーから報告のあった問題に対し、その緊急度に応じて緊急対策チームを結成して事に当たる仕組み。即時解決が図られなかった場合、経過時間に応じて自動的に社内エスカレーションしていき、最終的にはスティーブ・バルマーCEOにまで報告が上がる。「日本のユーザーは製品に対する要求品質が高く、バグの報告件数はワールドワイドで1位(バグによる不具合の場合、マイクロソフトは無償で対処を行う)。2位はドイツとなっており、お国柄が出ているかもしれない」と森永氏は話す。
唯一、営業系のスタッフとして登壇したシステムテクノロジー統括本部の御代知克氏は、「アウェーの雰囲気を和らげるために」ということでマイクロソフト営業職種の特徴を紹介(写真=右)。ただしこれは、あくまでも個人的、主観的なものであるとのこと。
Tech Fieldersの集いは、取材陣泣かせのイベントである。登壇者であるマイクロソフト社員が、あまりにも本音で話しすぎるため、当日の内容を余さず伝えることが難しいからだ。定期開催されるこの集いに、ITエンジニア自らが参加することが、生きた情報を得る唯一の手段となる。
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