NASAも認めたコンテンツ運用の切り札アーカイブソリューション新潮流(2/2 ページ)

» 2009年03月23日 06時03分 公開
[大西高弘,ITmedia]
前のページへ 1|2       

作業負担、TCOの削減へ

 コンテンツアーカイブでは、管理者の工数、手間も気になる点だ。また、増え続けるコンテンツデータをできるだけ効率的に保管できるかも大きな注目点といえる。堀本氏も次のように述べる。「確かに、保管や参照といった利用する機能のレベルが高くても、作業が複雑で、他のシステムと連携する場合も手間がかかるようではユーザーの負担は軽減できません。高い信頼性と使い勝手の良さ、これを両立させる必要があります。またデータアーカイブは増え続けるコンテンツデータを効率的に保管しなければなりません。ストレージの増設は容易でしかも無駄がない、というのが最低条件になりますね」

「システム管理者、ユーザーにとってストレスの少ないアーカイブソリューションであることが大切」と語る堀本徹主管技師

 HCAPでは、シングルネームスペースという機能を持っている。これは仮想化技術を使って、どのノードにアクセスしても1つの同じファイルシステムに見えるようにするものだ。また自動負荷分散機能も備えており、初期に入れたストレージから増設ストレージに自動的にデータを移動し負荷分散ができるようになっている。これらの機能によりストレージ増設時のわずらわしい設定、データ移動作業が不要になる。

 ストレージの増設には、物理的な作業の負荷も大きいが、それ以上にデータの配置設計や、設定の変更の負担も大きい。慎重を要する作業であり、データの破損などの事故が発生する可能性もある。ともすれば属人化しやすい作業なので、この作業が容易になれば、担当できるスタッフが増え、業務の伝承もしやすい。またHCAPでは重複データを排除する機能を持っており、効率的なストレージ利用が可能になっている。

柔軟なインタフェースが評価される

 HCAPという日立の最新コンテンツアーカイブプラットフォームの機能を1つ1つ確認していくと、逆に現在ユーザーが置かれている状況、コンテンツ管理の現状などが透けて見えてくるわけだが、HCAPの活用事例にはさらにいま必要とされている機能条件が見えてくる。

 その1つに、他のシステムとのインタフェースがある。HCAPはNFS、CIFS、HTTPといった標準のインタフェースに対応しており、データへのアクセスも容易にできるようになっている。コンテンツアーカイブに対応するために、他のシステムとの連携に新たなシステム構築や機能追加が必要となるのは、これもまたユーザーにとって不安材料となってしまう。

 米国航空宇宙局、NASAもHCAPの代表的なユーザーだが、NASAが導入を決めた要因のひとつは標準インタフェースに対応という点だったと言われている。同局では、HCAP内のデータに頻繁に各局員がアクセスする設定をしている。これまでテープ管理をしていた気象データなどにアクセスするのに場合によっては数時間の待ち時間という状況を大幅に改善したという。

 また、インターネット経由で顧客の貴重な写真を30年以上長期間保存するサービスを行っている企業もHCAPユーザーだが、ここでも、業界標準のオープンなインタフェースが評価された。カスタムメイドの自社システムとストレスなく連携させるには、必要不可欠な条件だったようだ。

 以上2つの導入事例では、インタフェースだけでなく、真正性チェック機能や高速検索機能なども大いに評価されている。両社ともデータの消失、漏えい、改ざんなどには大変神経を使うコンテンツを扱っているだけに、その点は基本的な要件だったということだろう。

 国内でもHCAPユーザーは着実に増加しているとのことだが、金融や物流など膨大な取引データを保管する必要がある企業から多くの引き合いがあるという。全国に多数の拠点を持ち、各拠点でコンテンツが膨大に発生するような場合は、HCAPを導入して数100TB単位のコンテンツを一括管理する仕組みに変えてTCOの大幅な削減を実現させているようだ。

シングルネームスペースと自動負荷分散の機能

保管庫だけではなくクラウドにも活用できる

 大規模ユーザー1社がHCAPを導入するケースとともに、ITサービスを展開する企業が顧客サービスのために導入するケースも増えてくるのではないか、と日立では見ている。

 「クラウドコンピューティングのようなサービスを展開したい企業からの引き合いはかなり来ています。こうした企業にとって信頼性と拡張性を兼ね備えたアーカイブプラットフォームはビジネスの基礎となるITインフラです。」と堀本氏は話す。

 HCAPにはオプションとして、高速な検索機能やメインサイトとリモートサイトを用意して、リモートレプリケーションを実現する機能も追加することができる。こうした機能を利用することで、さらに多様なコンテンツ活用が期待できる。

 HCAPはテープや他の記録媒体に過去の業務関連コンテンツを蓄積、管理していたユーザーに大きなインパクトを与えるだろう。高度な検索機能と堅牢なデータ保管能力はこれまでのデータ活用のスピードを大幅にアップさせる。改ざんの許されない過去のコンテンツデータを多くの業務スタッフが頻繁に活用する時代、監査の効率化をより向上させる時代はすぐそこまで来ている。アーカイブのプラットフォームがめったに中身を引き出さない単なる保管庫だった時代は過ぎ去ろうとしている。

PlanITトップはこちら

過去のニュース一覧はこちら

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ