IBMのSun買収交渉で気になる富士通の立場Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年03月23日 07時57分 公開
[松岡功ITmedia]
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Sunが導くIBMと富士通の新たな関係

 IBMによるSunの買収が実現すれば、気になる点がもう1つある。Sunと関係の深い富士通の立場がどうなるのかだ。

 Sunと富士通は1980年代から製品のOEM供給をはじめとして、非常に深い関係を築いてきた。2004年には、今やSunにとっても富士通にとってもサーバ事業の屋台骨となっているSPARC/Solarisサーバの共同開発にも乗り出し、もはや“運命共同体”といっても過言ではない関係だといえる。

 だが、この04年の提携強化は、SunのSPARCプロセッサにおける開発力の限界を見せたものともなった。さらにここ数年、Sunがx86サーバへのSolaris搭載に注力していることも、「SPARCの開発に見切りをつけるための動き」と見る業界関係者が少なくない。ただ、ミッションクリティカルなエンタープライズシステムに対しては、まだまだSPARC/Solarisサーバでないと対応できないのも事実。Sunと富士通が共同開発を続けている製品領域もまさにそこだ。

 そうした状況の中で、もしSunがIBMの傘下へ入ったとすると、はたして“運命共同体”の関係はどうなるのか。IBMがSPARCプロセッサの開発を止める判断をすれば、富士通は完全に梯子を外された状態に陥り、今後のサーバ戦略に多大な影響が及ぶことは必至だ。

 こう考えていくと、富士通にとっては不利な状況ばかりが思い浮かぶが、業界関係者の中には興味深い見方もある。

 「IBMと富士通はこれまで対立関係にあったが、ここ数年はJava関連ビジネスなどで手を結ぶケースも出てきている。もしIBMが富士通と関係の深いSunを買収すれば、これを機にIBMと富士通が広範囲に協業するかもしれない。そのターゲットとなるのは、クラウドコンピューティングに関わるあらゆるビジネスだ。Sunが両社を結ぶキャスティングボードを握る可能性は大いにある」

 さらにその業界関係者はこう続けた。

 「もしIBMがSunを完全に内部に取り込んでしまうなら、Sunの持つ革新性を生かすことはできないだろう。しかし、Sunを存続させて例えば富士通が一定の出資を行ったりすれば、IBMにとってもただ丸呑みするのとは違うシナリオが描けるのではないか。富士通にとっても今の閉塞状態を打ち破る絶好の機会になる」

 SunはUNIXでオープンシステムの風を起こし、Javaでインターネットをビジネスの道具にした、いわば“時代の申し子”である。その役割が終わりつつあるのか。はたまた新たな役割を担おうとしているのか。いずれにしても、IT業界の歴史の大きな節目を象徴する動きといえそうだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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