「x86サーバとWindowsで戦う」――緊密な関係にフェーズを移す富士通とMS共同SI体制を整備

10年以上の協業実績がある富士通とマイクロソフトが、協業を一層強化する。富士通のハードとシステム構築ノウハウ、MSのソフトを結び付け、サービスとして売り出す。システム構築は共同で行うなど、新たな市場の開拓を掲げる。

» 2009年03月27日 18時09分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 富士通とマイクロソフトは3月26日、商談の開拓、システム構築、運用サポートまでを共同で進めるシステム構築体制を整備すると発表した。これに伴い、富士通のPCサーバとシステム構築技術、マイクロソフトのWindows Serverベースのソフトウェアを組み合わせたサービスを4月1日から共同で展開する。従事していたUNIX関連のシステム構築から対象を広げ、新たな顧客を獲得したい富士通と、製品のライセンス販売に加え、サポート・運用などのサービスを強化したいマイクロソフトの思惑が、緊密な連携をもたらした。

 協業では、富士通のPCサーバ「PRIMERGY」をはじめとするハードウェアやシステム構築技術と、マイクロソフトのグループウェア「Exchange Server」、文書共有ソフトウェア「SharePoint Server」、データベースソフトウェア「SQL Server」といったソフトウェアを組み合わせ、サービスとして提供する。

 サービスの内容は、Exchange Serverを活用した情報活用、SharePoint Serverによる文書管理のコンプライアンス強化、SQL Serverが持つBI(ビジネスインテリジェンス)機能を使った経営判断の迅速化――を主軸に据え、顧客のコスト削減をもたらす提案を進める。

 商談の獲得、コンサルティング、システム構築、運用保守までを一括で提供するために、営業部門ごとに2社が協力して営業戦略を練り、顧客に提案する。システム構築では2社間でプロジェクトを組む。協力体制の強化に備え、2社は既に各企業内に協業ビジネスを担当する部門を設立、数人〜数十人規模で運営している。そのほか、子会社の従業員を含む2000人をマイクロソフト製品の認定エンジニアとして育成し、受注増につなげる。

「Windowsとx86サーバ」のタッグで新規市場を開拓

 富士通とマイクロソフトの協業は、Windows Server OSの共同検証に始まり、10年以上続いている。今回新たに協業を強化した背景をひも解くと、2社が抱えている課題が浮かび上がる。

富士通経営執行役マーケティング本部長の中山恵子氏 富士通経営執行役マーケティング本部長の中山恵子氏

 富士通が目的とするのは、システム構築サービスやIA(インテルアーキテクチャ)サーバ事業の拡大。だが、「UNIX一辺倒だった」と富士通経営執行役マーケティング本部長の中山恵子氏が話すように、富士通はシステム構築事業においてWindows製品の提案に積極的ではなかったという。「Windowsを使ったシステム構築を担当するのは子会社が中心で、富士通はオラクル製品が主体だった」(同氏)

 ミドルウェア市場では、「(Exchange ServerやSQL Serverなど)マイクロソフト製品が事実上のデファクトスタンダード(業界標準)」(中山氏)。また、IT市場ではx86サーバの成長が見込まれると見ている。マイクロソフトと共同でWindows製品とx86サーバを連携したシステム構築事業を展開することにより、未開拓だった新たな層の顧客にサービスを訴求できるようになる。

マイクロソフト執行役ジャパングローバルパートナー統括本部担当の前田浩氏 マイクロソフト執行役ジャパングローバルパートナー統括本部担当の前田浩氏

 マイクロソフトにとっても今回の協業強化は渡りに船だ。「これまでは製品ありきで協業を進めてきた」(マイクロソフト執行役ジャパングローバルパートナー統括本部担当の前田浩氏)経緯があり、主体となるビジネスモデルは製品を売ってライセンス費用で稼ぐ形態。ユーザー企業のシステム構築や運用支援、障害対策などをまとめたサービスの提供は手つかずだった。

 「x86サーバの能力が向上する中、廉価なシステムを早く作り、維持費用を削減することをユーザー企業は求めている」(前田氏)。こうした要望に対応できるサービスを提供する体制を作ることで、利益の拡大が見込める。「サポートサービスを提携先の企業に依頼するのは初」と前田氏。富士通と組むことで、同社が得意としている大規模の企業に、Exchange ServerやSQL Serverを売り込む土台が整う。

 富士通とマイクロソフトの緊密な関係は、製品ベースでの提携から、システム構築やサービスの共同展開という新たなフェーズに上がった。マイクロソフトの前田氏は「世界で戦うにはx86サーバとWindowsの組み合わせが必要」と強調する。協業の対象となるサービスでは今後3年間で500億円の売り上げを目指している。

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