マイクロソフトと提携強化した富士通の深謀遠慮Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年03月30日 07時14分 公開
[松岡功ITmedia]
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PCサーバのグローバル戦略にも連動

 先ほど、富士通とマイクロソフトは広範囲にわたって協業してきたと記したが、企業システムの中でも規模の大きいエンタープライズ市場においては、富士通はこれまで必ずしもWindows Serverプラットフォームに力を入れてこなかった。

 富士通がこれまでエンタープライズ市場で力を入れてきたのは、メインフレームを別にするとUNIXプラットフォームだった。OSにはSolaris、データベースソフトにはOracleを適用し、多くの企業のミッションクリティカルなシステムを支えてきた。

 しかし、企業システムで着実な成長をみせるWindows Serverプラットフォームは、エンタープライズ市場でも新たなソリューション需要を掘り起こす商材として、ここにきて注目度が高まってきている。その理由は、PCサーバの性能が向上してきたことと、マイクロソフトのミドルウェア群が充実してきたことにある。

 そこで富士通は今、野副州旦社長の指揮のもと、PCサーバ事業のテコ入れに全力を挙げている。その象徴が、独シーメンスとの合弁会社である富士通シーメンス・コンピューターズ(FSC、本社:オランダ)を4月1日付けで完全子会社化し、全世界でPCサーバの製品ラインを統一しようという動きだ。

 この動きと今回のマイクロソフトとの提携強化が連動しているのは明らかだ。今回の両社の協業は日本市場を対象にしたものだが、今後はFSCを起点とした富士通のPCサーバにおけるグローバル戦略とともに、適用範囲が広がっていくとみられる。

 今回のマイクロソフトとの提携強化で、富士通はUNIXプラットフォーム一辺倒だったエンタープライズ市場でのシステム事業において、Windows Serverプラットフォームにも“本気”で取り組むことを表明した。

 折しも先々週、UNIXプラットフォームで富士通と関係の深い米Sun Microsystemsに対し、米IBMが買収交渉しているとの報道が業界を駆け巡った。Sunの行方がどうなるかは分からないが、こうした動きにUNIXプラットフォームが転機を迎えているとみる向きも少なくない。富士通のWindows Serverプラットフォームへの本気の取り組みには、そうした情勢をにらんだ深謀遠慮もありそうだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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