企業ITサービスを支えるブレードサーバ

ブレード活用のトレンドはSANブートか内蔵HDDは必要? 不要?

かつてのブレードサーバに搭載されていたストレージは、信頼性や堅牢性が十分とは言い難いものだった。しかし、ブレードサーバの進化とともに、ストレージをめぐる環境も改善されつつある。

» 2009年03月30日 13時30分 公開
[大神企画,ITmedia]

内蔵ハードディスクは前か後か?

 高集積なサーバとして登場した黎明期のブレードサーバは、ブレードそのものを部品として考えていたためか、ハードディスクの信頼性はあまり考慮されていなかった。それがブレードサーバがさまざまな企業システムのプラットフォームとして採用されるようになって、そこで扱う情報の価値が上がるとともに、ブレードサーバのストレージも重要性が増してきた。しかし、ブレードサーバにおけるストレージの扱いを見ると、サーバベンダーによって若干の温度差があるようだ。

 まず、過去のブレードサーバから大きな変化のないブレードを用意しているのが、日本IBMだ。IBMの「BladeCenter」は、シャーシの仕様を公開するなど、そのオープン性と互換性を重視しているが、内蔵ハードディスクは基本的にホットスワップを考慮しておらず、前面より交換可能な仕様にはなっていない。一部のブレードは、2台のハードディスクを内蔵して冗長化構成がとれるようになっているが、障害発生時はブレードを停止して取り外してからの交換になる。こうした構成にしているのは、内蔵ハードディスクにデータを格納することを想定していないからだ。内蔵ハードディスクは、OSやアプリケーションをブートさせるためのものであり、重要なデータは外部のストレージに保管するというわけだ。

 ストレージベイをブレードの最前面に配置し、内蔵ハードディスクをホットスワップ対応にしているブレードサーバもある。現在のブレードサーバはこちらが主流であり、日本HPの「HP BladeSystem」、NECの「SIGMABLADE」、富士通の「PRIMERGY TRIOLE BladeServer」、日立の「BladeSymphony」、デルの「PowerEdge BladeServer」、そしてサンの「Sun Blade」と、BladeCenter以外のブレードサーバはいずれもブレードサーバの前面にハードディスクを置いている。これは、ストレージの可用性を向上させるだけでなく、外部ストレージを用意しないシステム環境においても、安全にブレードサーバを運用可能にするという意味がある。

 さらに、ストレージベイをブレードの最前面に配置するのは、ハードディスクの熱対策に有効だからと理由付けるサーバベンダーもある。ブレードサーバは、シャーシの背面に配置された冷却ファンによって前面から冷たい空気を吸い込むというエアフローになっているが、熱に弱いハードディスクを前に置くことで耐障害性を向上させるわけである。

IBM BladeCenterサーバブレードのレイアウト。HDDが前面に来ているのが分かる(写真=左)、BladeCenter前面の排気メッシュ。六角形(HEX)状の排気メッシュは、IBMのパテントだという(写真=右)

ストレージブレードとディスク拡張ブレード

 前述したように、外部ストレージのないシステム環境でブレードサーバを運用する例がないわけではないが、現在のブレードサーバでは外部ストレージを用意することが一般的である。しかし、外部ストレージを利用する際、どこに配置するかも重要な検討事項だ。

 ブレードサーバを導入する理由はいくつかあるが、非常に高い集積度を評価して導入したという企業が少なくない。ブレードサーバは、ラックサーバに比較して必ずしもコストパフォーマンスに優れているわけではないので、より少ないスペースにサーバを詰め込めることが、ブレードサーバの価値といえる。

 ところが、外部ストレージを接続した場合、当然のことながらストレージを搭載する分のラックスペースが必要になる。シャーシの内部にブレードがフルに差してある状態ならば、外部ストレージ用のスペースが気になることは少ない。だが、シャーシに空きがあるのに、外部ストレージ用のスペースを用意しなければならないのでは、スペースを有効利用するという意味で疑問が残る。場合によっては、ラックサーバのほうが無駄なスペースが少ないこともあるほどだ。

 そこでいくつかのサーバベンダーは、シャーシに格納できるストレージを用意するようになった。例えば、HP BladeSystemでは、サーバブレードのハードディスクを増設できるストレージブレード「HP StorageWorks SB40c」を用意している。これは、サーバブレードのディスク容量が足りない場合に、そのサーバブレードの隣にあるスロットに追加する仕組みだ。HP BladeSystemでは同様に、サーバブレードのデータをバックアップするためのテープブレードもある。

 サーバブレードのディスク容量を追加するのではなく、最初から大容量のストレージを内蔵したサーバブレードもある。例えば、NECの「Express5800/120Bb-m6」は、ハードディスクを最大6台内蔵できる構造になっている。日立の「BS320 HDD拡張サーバブレード」も同様だ。HP BladeSystemでは「HP StorageWorks All-in-One SB600c」がそれに相当する。

SANブート専用のディスクレスブレードも登場

 一方で、ストレージベイを持たないブレードも登場しつつある。SANブートを前提としたものであり、ハードディスクを内蔵するスペースをメモリスロットにして、より多くのメモリを搭載可能にしている。

 NECの「Express5800/120Bb-d6」、日本HPの「HP ProLiant BL495c」、日立の「BS320 SAN専用サーバブレード」などがそれに相当する。メモリの搭載容量が多ければ多いほど、サーバ仮想化環境での稼働が効果的であり、サーバ仮想化のニーズが増えるに従って、現在はディスクレスブレードを用意していないサーバベンダーも、ディスクレスモデルを用意するようになるだろう。

 なお、ディスクレスブレードの中には、内部にUSBポートやSDカードスロットを備え、ヴイエムウェアの「VMware ESXi」など、組み込みタイプのハイパーバイザ型仮想化ソフトウェアがブートできるものもある。仮想化ソフトウェアはUSBメモリからブートし、仮想マシンのイメージは外部ストレージで共有するといった使い方も、今後は広がっていくと考えられる。

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