会社が無くなる――根底から変化する日本の産業構造伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2009年04月03日 16時02分 公開
[伴大作,ITmedia]

経済鎖国状態の終わり

 日立製作所と東芝が業績を回復する原動力として重電に経営資源を集中するということは、それ以外の事業は中核事業ではなくなるということを意味する。半導体とかコンピューター、家電、自動車機器部門などは原則として切り出されるか、外部の企業に売却されることを意味する。

 考えるだけでも恐ろしい事が起こりかねない。仮に、日本メーカーのコンピュータ部門が1つ売却されるとしたら、日本の主要ベンダーの一角が崩れるという話だけでは済まない。買収に手を上げる企業は、IBMあるいはHPなど世界の大手ベンダーに限られる可能性が高い。その結果、世界のシステム、ビジネス市場の寡占化は一層進む。

 このように、今回の金融恐慌の与えたインパクトにより、中核事業への経営資源集中という名の下、一挙に国際化が進む可能性が高いのだ。結局、日本市場は今回の金融恐慌をきっかけに、事実上の「鎖国状態」を脱する可能性がある。

さらに広がる影響

 また、両社が家電部門を売却するとなれば、現在はパナソニック、ソニー、シャープがシェアを高めている薄型テレビ市場でも、現在の熾烈で不毛な価格競争が収束に向かい、上位企業の市場支配力が高まる。また、他の家電製品も概ね同じような傾向を示すだろう。

 以上のような話は、電機業界に限ったことではない。今回の金融危機とそれに続いた円高の進行で、自動車業界も日本国内ではほとんど利益を出すことができず、収益を海外に求め、補ってきた構図が明らかになった。しかし、その構図も完全に崩壊したといえる。今後は自動車業界もトヨタを筆頭に2〜3社(グループ)に統合されるに違いない。

 それはまるで、大手金融機関が三行に統合されたこと、流通がIYグループとAEONグループへ統合に向かっているのと似通って見える。

 おそらく、今回の不況からの完全脱出には数年を要することは間違いないだろう。その暁には、現在は2000社以上ある東証上場企業の数が半分以下に減少する可能性は非常に高い。

消え去る日本独自の商習慣

 日本への進出に成功した企業がある一方、日本市場は独特という意識を持ち、進出を諦めた世界的な大企業が数多くある。これは、日本国内の市場が外資から守られていると考えられる一方で、外国から日本への資本投資が少ないとも言える。

 また、仮に日本進出に踏み切ったとしても見合うだけのリターンが得られない場合、進出は失敗だった、そのような市場に資金を滞留するだけ無駄だと判断されるのは至極当然だ。円高の急速な進行は一つの理由でもある。欧米の金融機関は本国の台所事情が厳しくなり、現金が必要になり、日本の不動産やや株を売却、ディールの元金を調達した円キャリートレード解消(早い話が借金を返した)したのだ。

 資本の論理は実に冷酷だ。そこには我々が永年親しんだ「情実」など存在する余地はかけらもない。日本独自の「ぬるま湯体質」は実は非効率であり、廃すべき悪しき慣習なのだ。その辺をわきまえないと、日本市場が真に海外の企業や資本にとって魅力的には写らず、結果的に不況が長引いてしまう。

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