昨年11月25日付けの「5万円パソコンとクラウドの浅からぬ関係」と題した本コラムで、大手通信事業者がSaaSをはじめとしたクラウドサービスの一環として、企業のクライアントPC用にネットブックを一括して貸し出すサービスを検討していることを紹介した。
Android搭載ネットブックはその点、コスト削減効果はもとより、Googleのクラウドサービスなどとの容易な連携を図ることもできる打ってつけの商材となりうる。ネットブックを売るのではなく、その貸し出しも含めたクラウドサービスを提供するという発想である。
米調査会社のディスプレイサーチが4月1日、2008〜2012年の日本におけるネットブック市場(出荷台数ベース)の伸びが年率2.6%程度にとどまるとの予測を発表した。日本のネットブック市場は07年から08年にかけて約5.8倍に拡大したが、その普及が一巡し成長が鈍化するとの見方だ。
同社によると、昨今の経済危機が終息すれば、高機能なノートPCの需要が好転し、ネットブックは長期的にノートPC市場に変革を促し続けるものの、本来のノートPCに置き換わる存在にはならないとしている。
薄利多売が求められるネットブックは、出荷台数が伸びても、ますます激化する低価格競争によって収益確保が難しくなる。PCベンダー各社としては、そこを主戦場にするのは避けたいところだろう。
ならば、ネットブックについては発想を転換し、ビジネスモデルのルールそのものを変えてはどうか。ここにきてMicrosoftもWindows環境をテコにしたクラウドサービスの整備に本格的に乗り出している。
今後はネットブックをクラウドサービスの商材としてうまく取り込んだところが、混沌としたレースから抜け出していくのではないだろうか。Android搭載ネットブックの登場は、PC市場にそうした“ゲームのルール変更”を迫っているように思えてならない。
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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