ポイントプログラムの勢力図が塗り替わる時Next Wave(2/2 ページ)

» 2009年04月07日 10時57分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
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経産省が示す3つのガイドライン

 経済産業省では、そのようなポイント発行企業と消費者間のズレを解消しない限り、ポイントプログラムの健全な発展は望めないとし、企業ポイントプログラムのガイドライン(企業ポイントに関する消費者保護のあり方)を2009年1月に作成。発行企業に対し次の3つの対応を望んでいる。

 1つは、約款や書面等の交付、ウェブページでの表示など、消費者が必要に応じてポイントプログラムの内容を網羅的に確認できる仕組みを整備すること。

 2つ目は、ポイントプログラムの中で、特に消費者の期待の高い重要事項について、適切な時点で消費者にわかりやすいように表示・説明すること。

 そして3つ目は、利用条件変更の際の適切な対応や、ポイントカード紛失時の適切なトラブル対応を行うこと、といった内容だ。

 企業ポイントをどのように扱うべきか。その課題についてグローバルの動きから変化が起きようとしている。それが、国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)が2007年6月に発行した解釈指針書第13号「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」である。ここでは企業ポイントを、顧客が黙示的に支払いを行う別個の「商品」または「サービス」であるとの見解が示された。

 従来、ポイントの解釈は、景品や値引きという認識でポイント発行を費用として捉え、引当金として処理していたのだが、今後はポイントも商品と捉えることで、ポイント発行は将来における売上と認識され、繰り延べ収益による売上分割計上に変更することになる。

 そこで問題となるのがポイントの現金価値(公正価値)だ。例えば、代金1万円の商品において10%ポイント還元で1000ポイントを付与した場合、1000ポイント分を繰り延べ計上するが、それがいくらなのかを明確に計上することが求められる。家電量販店などは1ポイント1円で明確だが、ギフトや航空マイレージに交換した際に1マイルがいくらかを算出して会計処理しなければならなくなる。会計システムの見直しも迫られるだろう。

IFRIC発行の解釈指針書第13号により、ポイントは引当金方式から売上分割方式へと変更される(出典:野村総合研究所)

 冨田氏は、欧州で始まったIFRICの繰り延べ計上処理方針を米国も踏襲するため、その流れで日本でも2011年頃には導入されるだろうと見ている。ポイントプログラムのアウトソーシングによる会計処理コストの削減需要が活発になるとともに、ポイントの費用対効果を検証する中で、従来のポイント戦略が赤字であることが判明するケースでは、ポイントプログラムを見直して現金値引きに立ち戻る動きも出始めるかもしれないという。

共通ポイントになり得る勢力いまだ存在せず

 また、企業ポイントの費用対効果が検証できると、従来のマス媒体(TV、新聞等)による広告宣伝費や販売促進費を削り、消費者へ直接ポイントや値引き等で還元する流れが発生すると冨田氏は考えている。

 「ただし、自社だけで行っても限界がある。そのため、ポイントの交換サービスではなく、企業ポイントや電子マネーの合従連衡による共通ポイントプログラムが今後増えていき、企業連合内で顧客を囲い込む流れが生まれていく」(同氏)

 そうなると、基軸ポイントを中心に交換で形成していたピラミッド体制が崩壊し、提携グループでの囲い込みが効かなくなる。より消費者に支持されている人気のプログラムに流れ、ポイント連携の構図が大きく再編され企業連合が覇権を握っていくことになる。

 2007年8月にNRIが実施したアンケート調査でも、ポイント企業連合ができる場合に参加して欲しい企業として、「(電車やコンビニのような)少額のポイントを現金のように利用できる企業」(65・2%)や、「(携帯電話などの)継続して利用している企業」(58・2%)の希望が多く、消費者が日常的に継続して利用している企業が中核を担う可能性が高いことが推測される。

一般消費者にとって企業通貨といえるほどの共通ポイントはまだ不在(出典:野村総合研究所)

 現状では、TSUTAYAを中心とする「Tポイント」と「楽天スーパーポイント」が大規模に業種横断しつつあるが、まだ常に使い続ける企業通貨といえるほどの共通ポイント化しているとはいえない。

 冨田氏は、「今後一層、チャネルや業種の垣根を超えた連携強化が課題。だが、ターゲットユーザーを無視した展開は、サービス内容の矛盾を生み自滅へと至る可能性がある」と語り、本格的な共通化の難しさを指摘する。

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